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媒介契約の違いでマンションの売れ行きが本当に変わるのかを考えてみる

マンションを売却する際に「媒介契約の選び方によって売れ行きが変わる」なんてお話しを聞いたことがありませんか?3種類ある媒介契約にはそれぞれ異なる特徴があるのは事実ですが、本当にマンションの売れ行きも変わってくるのでしょうか。今回は、媒介契約ごとの特徴と、マンションの売れ行きに与える影響について詳しく解説していきます。

1. 売却における媒介契約の基礎知識

以前に閑話休題 媒介契約ごとの特徴を理解するのブログでも書いていますが、今回はもう少し具体的に分かりやすく、そして一般の方が気になる「ホントに媒介契約の違いで売れ行きが変わるのか」について書いていきます。

まずは媒介契約に関して基本的な内容を押さえておきましょう。

1-1 そもそも「レインズ」とは何なのか

「レインズ(REINS)」とは「Real Estate Information Network System」の略で、国土交通省から指定を受けた不動産流通機構が運営している、不動産情報交換のためのコンピューターネットワークシステムのことです。

レインズには、現在、売却や賃貸に出されている戸建てやマンション、土地などの不動産の情報が掲載されていて、過去に取引された不動産の成約価格などの情報も調べることができる、不動産取引に関しての重要な情報源です。

レインズに登録することで全ての不動産会社がネットワーク上で物件を見れるようになり、お客さんにおススメする物件を検索する際に、多くの不動産会社の目にとめられるメリットがあります。

1-2. レインズは不動産会社専用のデータベース

レインズは不動産会社専用のサイトのため、一般消費者は利用することができません。

物件ごとの詳細なデータが記載されているため、広く一般の方にも開放してしまうと個人情報の観点から問題になってしまうのが理由かもしれないです。

レインズが整備される以前の不動産業界では、不動産に関しての情報が不動産会社間でも共有されていないことが多くあり、不動産の購入を考えている消費者は不動産会社に行ってみないと希望する物件があるのかどうかも分からず、いくつもの不動産会社を回らなければならかなったようです。

恐らくこの時代の名残で、今でも「表に出ていない物件ってないですか?」って聞いてくる消費者の方がいるんでしょうね。

今の時代にそんな「隠し物件」を持っているのは、レインズへの登録の仕方が分からないお年寄りのやっている不動産会社か、知り合いの地主から「近所に知られると面倒だから、コッソリと、聞かれた人にだけ教えてくれ」と言われている地主系の不動産会社ぐらいじゃないかと、個人的には思っています。

レインズが作られたことで不動産会社間でも情報の共有がされるようになり、消費者がわざわざ違う不動産会社に足を運ばなくても、1つの不動産会社で他の不動産会社が扱っている物件を検索して紹介することができるようになっています。

1-3 媒介契約は「一般」「専任」「専属専任」の3種類

3種類ある媒介契約の特徴を見ていきましょう。
項目一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約
自己発見取引(自分で買主を探すこと)ができるできるできない
他の不動産業者との媒介契約できるできないできない
契約の有効期間指定なし
(通常は3ヶ月が多い)
最長3か月最長3か月
レインズへの登録義務ではない(通常は行います)媒介契約締結日の翌日から7営業日以内媒介契約締結日の翌日から5営業日以内
売却状況の報告義務任意2週間に1回以上1週間に1回以上

3種類の媒介契約の違いは

・自己発見取引(自分で物件の購入者を見つけること)について
・契約できる不動産会社の数
・契約の有効期間
・レインズへの登録義務や登録までの日数
・売却状況の報告義務の頻度

それぞれの内容を順番に見ていきましょう。

2. 媒介契約の違いが売却活動に及ぼす影響

媒介契約ごとの特徴が分かったところで、その特徴が実際の売却活動にどの程度の影響を与えるのかを考えていきます。

2-1 自己発見取引

読んで字のごとく、買主を売主である自分自身で見つけてくる「自己発見取引」ですが、これに関しては専属専任だけ認められていません。売買契約は必ず不動産会社を通して買主と契約することとなります。

ではもし仮に、一般媒介や専任媒介を結んだ状況で、自分で買主を見つけることができ、契約もできたとするとどんなメリットがあるのでしょう。

そうです。世間一般的には高いと言われている仲介手数料を不動産会社に払わなくてもよくなります。自己発見取引におけるメリットはこの1点のみでしょう。

ですが、自己発見取引での契約は九分九厘不可能です。契約できるとしたら、現金購入の買主を見つけた時のみではないでしょうか。

その理由は、銀行で住宅ローンを組む場合の提出書類に「重要事項説明書」があるからです。

契約書も提出しなければなりませんが、契約書はネットで検索すれば適当なひな型は見つけられると思います。

ですが、重要事項説明書はできません。なぜなら、重要事項説明書を作成できるのは不動産会社に限定されると宅地建物取引業法で定められています。

実際のところ、不動産取引も民間の取引で「民法」の範囲内のため、「売った、買った」は口約束でも成立するのが実情です。ただ、高額な不動産を口約束だけで売買を行うのはリスクがありすぎるため、宅建業法で「重要事項説明を行ってから契約をしなさいと」定められています。

銀行としても、売買価格の妥当性や、実際に所有権が移転されるかなどを担保するためにも、不動産会社の社印が押された重要事項説明書と契約書の提出を求めてきます。

このようなことを考えると、自己発見取引ができる・できないを理由として媒介契約を選ぶ必要性はないのではないでしょうか。

2-2 契約できる不動産会社の数

多分これは、世間で言われている「囲い込み」とか「塩漬け」のことを考えてのことではないかと。

もしくは、人気があって売れる物件は、一般媒介で複数の不動産会社を競わせた方が、より早く、いい条件で売れるとかと都市伝説ですかね。

実際のところ、今の時代に囲い込みは皆無ではないかと。バブルのころのように不動産がバンバン売れる時代ではないです。

両手取引と片手取引どっちを選ぶ?と聞かれれば、迷わず両手を選びます。ですが、欲張って両手を狙って片手も逃すようでしたら、今の時代の不動産会社は片手を選択します。

15年~20年ぐらい前までは、物件確認の問い合わせをしたときにウソの「商談中」は結構ありましたが、今はどこの不動産会社さんも紹介してくれますよ。

塩漬けに関しては、結果として「塩漬けになってしまった」物件はあるでしょうね。その理由は「高すぎる」からです。

ネットの情報に踊らされて「今は不動産価格が高くなっているから、この値段でも売れるだろう」と、どう考えても高すぎる値段で売りにだせば、当然ですが売れません。結果として塩漬けになっている物件はレインズだけでなく、ネットのポータルサイトを見てもチラホラと見受けられます。

1社だけにまかせるのも、複数社にまかせるのも売主さんの自由です。一般媒介だから複数社に頼まなければならないものでもないです。実際に一般媒介で1社のみに依頼する売主さんもおみえです。

専属専任、専任だから一生懸命、一般だから頑張らないなんて仕事はしないので、依頼する不動産会社の「数」で媒介契約を選ぶ必要もあまりないのかと思います。

2-3 契約の有効期間

3ヶ月だからとか、期間の定めがないからとかで選ぶことはないでしょう。

売れれば契約ですし、売れなかったら媒介を更新すればいいだけですし。単純な話しじゃないです?

大手不動産会社さんの場合は、期間内で解除を伝えると引き留めにあったり、解除のための書類を作成したり、いろいろと手間がかかるようですが、僕の場合は解除したいのなら電話1本で解除しちゃいますけどね。

売主さんが「あんたには任せられん。他の会社に任せる」という気になったのならしょうがないです。自分の力不足です。そんな状況で「なんとかもう少し~」とか「書類を作成するので~」とかで迷惑はかけたくないです。

業法があるので、更新の場合は念のための書類は作成しますが、ホンネを言えばこれも電話で確認しておしまいにしたいぐらいです。

3ヶ月周期で業者を変えて気分を変えるのも1つの方法ではあるかもですが、効果のほどはよく分かりません。

2-4 レインズへの登録義務や登録までの日数

5営業日なのか7営業日なのか。どこまで違いがあるのでしょうか。

そして、登録の義務のない一般媒介ですが、実際にレインズ登録しない不動産会社はまずいないです。みなさんちゃんと登録します。

なまじ5日や7日の縛りがない分、ひょっとすると一般媒介の方が早く登録されるんじゃないですかね。

そしてなにより、レインズよりも早くスーモやアットホームなどのポータルサイトには登録されます。なので、レインズへの登録義務や日数も媒介選択の要素にはならないのではないでしょうか。

2-5 売却状況の報告義務の頻度

これはどうなんでしょうね。2週間に1度よりも、1週間に1度のほうがいいのでしょうか。義務のない一般媒介だから報告しないってこともないでしょうし。

そもそも、報告内容が事実なのかを確かめる術もないですし。

複数社に依頼している一般媒介ならまだしも、1社にしか任せていない専属専任や専任の場合、「今週は●組の問い合わせがありました。他社からも●社の問い合わせがありました」って報告が事実かどうかも分からないですよね?

それこそ、「問い合わせはあるけど案内には至らないので、そろそろ値下げしませんか?」っていう「塩漬け作戦」かもしれないですよね?

案内が入らないのであれば、特段の報告はいらないのではと思ってしまいます。(ちゃんと報告はしてますけどね)

3. 世間的に言われている媒介契約ごとのメリット・デメリット

基本を押さえるためにも、世間一般で言われている媒介契約ごとのメリット・デメリットを書いていきます。

3-1 一般媒介契約のメリット

複数の不動産会社と媒介契約を結ぶため、不動産会社がそれぞれの強みを生かして販売活動を行っていきます。

一般的には次のようなメリットがあると言われています。

 競争意識が働く せっかく結んだ媒介契約。他社に先に買主を見つけられてしまっては元も子もないです。そのため、競争意識が働き、販売活動を一生懸命頑張ると言われています。

 「囲い込み」のリスクが少ない 複数の不動産会社に販売を依頼しているため、両手取引を狙って囲い込みをされるリスクが少なくなります。

3-2 一般媒介契約のデメリット

デメリットとしては次のようなことが言われています。

 連絡・打ち合わせの煩雑さ 複数の不動産会社と媒介契約を結んでしまうと、値下げや週末の予定などもそれぞれの不動産会社へ連絡する必要があるため、「めんどくさい」と感じることもでてきます。

 本気度が下がる可能性も どれだけ頑張って販売活動を行っても、他社に先を越されてしまったらそれでお終いです。そのため、チラシの折り込みやポスティング、オープンハウスなどの販売活動をためらわれる可能性もあります。

3-3 専属専任・専任媒介契約のメリット

 やる気アップ 売主からの仲介手数料は確保できているので、販売活動に対しても安心感をもって取り組むことができます。

 連絡がラク 一般媒介と違って対応するのが1社のみなので、連絡をするのがラクです。

3-4 専属専任・専任媒介契約のデメリット

 情報が限定される 販売状況に関しての報告が1社に限定されるため、情報の信ぴょう性や今後の対応方法などを考えることが難しくなる。

別の意味で頑張らないかも売主からの仲介手数料が確保できているため、売りにくい物件の場合にはかえって販売活動を疎かにされる可能性も。


4. タイプ別オススメの媒介契約

タイプ別のおすすめ媒介契約を書いていきます。

4-1 いろいろ話をききたいなら一般媒介

販売活動の内容や、実際の販売状況。売れなかった場合の値下げのタイミングや値下げする金額など。いろいろな人から話しを聞いて決めたい人には一般媒介がおすすめになります。

ポータルサイトへの掲載も媒介契約を結んだ会社の数だけ増えますので、案外1番売りやすい媒介契約かもしれません。

4-2 めんどくさがり屋さんは専属専任・専任媒介

めんどくさいのがキライなら専属専任・専任になります。やり取りが1社だけなので簡単です。

売却をするうえで1番の手間となる内覧の日程調整の連絡が1社だけで済むのは、めんどくさがり屋さんにとっては大きなメリットではないでしょうか。

とにかくシンプルに、自分で動くことを極力少なくしたい人には、専属専任・専任媒介の一択しかありません。

5. 3ヶ月ごとの契約変更は避けましょう

世間では「売れなかったら3ヶ月ごとに不動産会社を変えていきましょう」などと書いてあるブログが多数ありますが、個人的にはオススメできません。

その理由を書いていきます。

5-1 他社のためには働きたくない

大部分の不動産会社は専属専任・専任媒介での契約を押してきます。

3ヶ月経ったら媒介契約が終了になるとしたら、媒介が切れる2週間ぐらい前から恐らく不動産会社の販売活動・販売気力はほぼゼロに近づきます。

その理由は、最近の買主さんで「即決」する人はほとんどいません。内覧が終われば商談をする間も与えず「検討しておきます」と言って、とっとと帰っていきます。

1週間後に返事があれば超レアケース。2週間、1ヶ月かかることも少なくありません。そのまま音信不通になる人もザラにいます。

「買います」の返事をもらった時に自社で媒介契約をしていなければ、その時に媒介契約をもっている業者に紹介させてもらう形になります。

売主さんのために販売を頑張ってきたのに、媒介契約を切られて、他の業者に漁夫の利で買主を紹介する気になるでしょうか。なる人、なる会社があったら、そんなお人よしに会ってみたいものです。

5-2 媒介を変えても会社は変えない方が

不動産って不思議な「縁」があるもので、あんがい媒介の切れ目の時期って問い合わせが入ったりするものです。

いつまでも同じ会社だけに頼むのがイヤだったり、不安だったりするようでしたら、媒介の種類は変えてもいいので、その会社とは繋がりを持ち続けた方がいいような気がします。

専属専任・専任媒介だったら、一般媒介に変えて複数社に販売をお願いしてみるのもいいですね。

一括査定サイトが問い合わせを増やして手数料を稼ぎたいがための「3ヶ月で売れなかったら不動産会社を変えてみるもの1つの方法」は、あまりオススメできません。

5-3 あんがい一般媒介がいいのでは

複数の不動産会社と媒介契約を結び、いろいろな話しが聞けるのが一般媒介ですが、一般媒介だからといって複数の不動産会社と媒介契約を結ばなければいけないわけではありません。

1社とだけ一般媒介を結んでおき、必要に応じて不動産会社の数を増やすのもいい方法だと思います。

「今はあなただけだから、今のうちに頑張って売ってくださいね」のセリフで頑張ってもらい、3ヶ月、半年と結果が出なかったら「1社増やすので負けないように頑張ってください」でもいいのではないでしょうか。

専属専任・専任媒介だから広告・販売を頑張るってこともないですし、売れない物件が専属専任・専任媒介にしたら売れるわけでもないです。

連絡のやり取りがちょっと手間ではありますが、一般媒介が1番理にかなった媒介契約だと思います。

まとめ

つらつらと、他のブログでは書いていないような内容で媒介契約のことを書いてきました。

ですが、実際にお客さんから媒介契約を結んでいただき販売活動を行っている立場で考えると、なにも専属専任・専任媒介にこだわる必要はないのではないかと日々思っています。

大手さんは媒介のノルマがあるので専属専任・専任媒介にこだわりますが、お客さんにしてみたらどれを選んでいただいても大差はないと思います。

売却のことでご不明、ご心配なことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。できる限りのお手伝いをさせていただきます。




 エイチ・コーポレーション 代表:林  裕 地


【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。

結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。

保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など

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