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離婚時の住み替えにあえてダブルローンを選択してみる

離婚時の住み替えの定番は、今の家を売却して賃貸への引っ越しですが、ここであえてダブルローンを利用して持ち家新居への引っ越しを考えてみてはどうでしょう?財産分与や配偶者との話し合いの問題はありますが、上手く使えば利用価値の高いダブルローンです。今回は、ダブルローンの仕組みやリスクを再確認するとともに、ダブルローンならではのメリットを書いてきます。

2025年4月25日 追記更新

1. ぺアローンの人は読まないでください

今回のブログに関しては、ぺアローンを利用して自宅を購入した人は読まないでください。

僕の仕事においてのスタンスは、「ぺアローンや収入合算などを利用して家を購入した場合、離婚時には売却して清算しましょう。」です。

清算をしないと離婚できないわけでもないですし、離婚後もぺアローンを2人で払い続けることも可能です。

ですが、イヤで別れた元配偶者と離婚後も関係を続けるのはいかがなものでしょう。だったら、離婚せずに仮面夫婦としてでも暮らしていけばいいのでは?と思ってしまいます。

それに、清算せずに離婚するといろいろな問題もでてきます。

・【参照】離婚をする際に共有名義の不動産がおよぼす影響とは
・【参照】離婚時のペアローン問題:オーバーローンにどう対処する?
・【参照】ぺアローン中の夫婦が離婚の際に注意すべきポイントと解決策

なので、今回はあくまでも「単独所有」の方をターゲットに書いたブログとなり、ぺアローンを利用している人が読んでも参考になることはあまりないかと思います。

2. そもそもダブルローンとは

一般的にダブルローンは、自宅の売却よりも新居の購入を先にする「買い先行」の時に使います。

自宅の住宅ローンが残っていれば、その住宅ローンが「1本目」となります。そのうえで、新居を購入するために住宅ローンを「もう1本」組むと、合計で住宅ローンが「2本」になり、ダブルローンの完成です。

2本の住宅ローンを並行して返済する必要があるため、当然ですが毎月の支払いは高額(ざっくり2倍)になります。

2-1 住み替えローンとは違います

ダブルローンとならんで、住み替え時に利用するローンに「住み替えローン」があります。

住み替えの時に利用するので同じようなローンと思われるかもしれませんが、内容としては全く異なります。

詳しくは後述の「5-2 住み替えローンの仕組み」で書いていますが、住み替えローンは、あくまでも現在の住宅ローンは完済することを前提としていて、住宅ローンとしては「1本」のみの返済となるところがダブルローンと大きく異なるところです。

3. ダブルローンのメリット

僕が考えるダブルローンのメリットは次の4つです。

・買いたい物件をじっくり探せる
・売却も腰を据えて対応できる
・仮住まいが不要
・売却時の内覧対応が楽になる

3-1 買いたい物件をじっくり探せる

住み替えローンを使って住み替えをしようとした場合、

 売却がいい感じになってきた いま売りに出ている物件から早く選ばないと、この売却のチャンスを逃してしまうかも…

とか

 欲しい物件が見つかった 他の人に買われてしまう前に、早く売却をしなければ…

などと、売りと買いのタイミングを合わせるのが難しいケースが出てきます。

ですが、ダブルローンはあくまでも「買い」を先行させる考え方なので、買いたい物件が出てくるまでじっくりと探すことができます。

離婚という苦難を乗り越えての新生活をスタートさせるための新居選びでしたら、焦ることなくじっくりと探したいと思いませんか?

そんな考えにはダブルローンがおススメです。

3-2 売却も腰を据えて対応できる

前述の「買いたい物件をじっくり探せる」と同じように、売却においても「腰を据えて」対応することができます。

住み替えローンの場合であれば、「売れそうになったら買いを急ぐ」「買いたい物件が見つかったら売却を急ぐ」などのように、売りと買いのタイミングを合わせる事に主眼が向きがちになってしまいます。

ですが実際には、売りと買いのタイミングがマッチするような奇跡がそうそうおきることはなく、往々にして売却が先行してしまって、新居が見つかるまでは仮住まいをするパターンになりがちです。

そして、仮住まいを始めてからも、希望するような新居がなかなか見つからず、焦りがでてくるパターンに陥るでしょう。

ですが、ダブルローンを使っての「買い先行」であればこのようなことにはなりません。気に入った家が見つかるまで根気よく探せばいいだけです。仮住まいの家賃も不要です。結構分かりやすいメリットだと思いますが、いかがですか?

3-3 仮住まいが不要

 売り先行 自宅売却 ⇒ 仮住まいへ引越し ⇒ 新居購入 ⇒ 引越し


 買い先行 新居購入 ⇒ 新居へ引越し ⇒ 自宅売却


荷造りや荷解き、2回の引っ越し費用。そしてなにより、仮住まいを手配するための手間や費用などを考えると、買い先行のメリットの大きさを実感できるのではないでしょうか。

3-4 売却時の内覧対応が楽になる

自宅に住みながらの売却では、購入希望者の内覧に対応する必要があります。

内覧前の室内の清掃もそうですし、内覧に対応するために週末の予定がたてづらくなったり。住みながらの売却は、売主にとっても結構なストレスとなります。

新居を先に購入して引越しをして空き家にしてしまえば、カギを不動産会社の担当者に渡しておくだけで内覧対応は不要になります。

離婚のための売却であれば、余計なストレスを溜めることなく売却をすすめられることは、精神的にも大きなメリットになると思います。

4. ダブルローンのデメリットは

デメリットとしては2つ。ですが、デメリットの1つは「何とかなるんじゃない?」のって感じです。

4-1 月々の返済額が増える

これは致し方ありません。ローンをダブルで持つのですから。

住宅ローンの残債と売却希望価格との兼ね合いもありますが、自宅の売却まで6ヶ月~1年程度の期間は見ておいた方がいいでしょう。

ここでの資金計画をしっかりとしないと、ダブルローンはホントに危険になってしまいます。

4-2 フツ~にやると審査は厳しい

ローンを2本持つので、当然ですが審査も厳しくなります。

住宅ローンの審査を通過した方であればお判りでしょうが、住宅ローンの主だった審査基準としては

・年収に占める年間の返済額の割合=返済比率
・完済までの年齢


この2つがポイントになってきます。

1本目の住宅ローンにプラスして2本目を借り入れるので、フツ~に考えれば返済比率は高くなります。

それにプラスして、車のローンを持っている人もいるでしょうし、カードローンやリボ払いを使っている人もいるのでは?

年齢も高くなり、35年返済ではなく20年~25年で返済しなければいけない人も多くなるでしょう。

フツ~の方法では審査を通すことも難しいのが現実です。

ですが、そんなあなたにおススメの金融機関があります。それは「フラット35」です。

4-3 でも、フラット35なら大丈夫?

フラット35を使えばダブルローンを利用しやすくなります。

いつまでこの仕組みを維持してくれるのかは分かりませんが、2025年4月現在では、「現在の自宅を売却するのであれば、その住宅ローンの返済額は返済比率には含まない」状態で審査をしてくれます。

そして、この場合の売却は、「新しい家を買ったら今の家は売却します」という意思で、審査の時点で「売却の媒介契約書」を提出するだけでOKです。

「じゃあ、実際には売却せずに、現居もしくは新居を賃貸にしてもいいの?」と思われるかもしれませんが、それはヤメておきましょう。

住宅ローンを使って購入した家を賃貸として利用するのは「住宅ローンの目的外利用」となり、発覚した場合には金融機関から一括返済を求められる場合があります。

特にフラット35は、いろいろと悪事を働いた不動産業者がいるため、そのあたりの調査は結構厳しくされるようです。

売却の期日は特に定められることはありませんが、ちゃんと売却はするようにしてください。

変動金利も少しずつ上がり始めているなか、住宅性能に応じての優遇や子育て世代への優遇、さらに「中古プラス」という謎の融通措置も取られるようになり、以前のように「フラットの金利は高いっ!」とも言えないようになってきています。

ダブルローンの借入先としてはフラット35をオススメしています。

5. 住み替えローンとの違い

住み替えを考えた時に、ダブルローン以外にも「住み替えローン」といった方法もあります。

5-1 住み替えローンとは

住み替えローンとは、自宅を売っても住宅ローンを完済できない時に、新居の購入資金に残債を含めて借りることができる住宅ローン商品です。

例えば、住宅ローンを返済中の人が何らかの事情で住み替えをしなければならなくなり、その時の住宅ローンの残債が2,000万だったとします。

住み替えローンを利用するためのステップとしては

①自宅の売却をスタートさせる
②同時並行で新居を探す
③自宅が成約した(成約価格が1,500万だった)
④新居が見つかった(価格が2,000万)
⑤現居のローンの残債(2,000万-1,500万=500万)を新居の住宅ローンに上乗せして借入する
⑥自宅の売却価格1,500万に、新居用に借りたローンから500万を補填して住宅ローンを完済する
⑦2,000万+500万=2,500万が新居の住宅ローンとしてスタートする

こんな流れになります。

ダブルローンのように、(住宅ローンの残債:2,000万円)と(新居の購入費用:2,000万円)の2本の住宅ローンを持ち続けるよりも月々の返済額は低くなるので、経済的な負担は少なくなります。

5-2 住み替えローンの方がいいのでは?

「じゃあ、ダブルローンよりも住み替えローンを使った方がいいんじゃないか?」と思われるかもしれませんが、ちょっと考えが甘いです。その理由は、(売却価格:1,500万円)と(新居の購入費用:2,000万円)の関係にあります。

銀行に住み替えローンの審査を申し込むためには、「いくらで売れて、どれだけ残債が残り、いくらの新居を購入するのか」を確定させなければなりません。

例えば、「売り先行」で進んだ場合には、(売却価格:1,500万円)は確定します。

その後に、新居が見つかるまで(見つかるまで購入価格は確定しません)自宅の購入者さんは引き渡しを待ってくれるでしょうか?あなただったら待ちますか?いつになるか分かりませんよ。

次に、「買い先行」で進んだ場合には、(新居の購入費用:2,000万円)は確定します。

その後に、自宅が売れるまで(売れるまで売却価格は確定しません)新居の所有者さんは引き渡しを待ってくれるでしょうか?(引き渡しができないと、所有者さんはお金を手にすることができません)あなただったら待ちますか?

結局のところ、「仲介」で売買を行うのであれば、この「売り」と「買い」を同時に確定させることはまず不可能、かならずどちらかが先行してしまいます。

そのため、住み替えローンを利用する際には、事前に「買取」で売却価格を決定し、購入物件を決める「売り先行」になります。

5-3 買取の仕組み

買取は、不動産会社が買主となって、直接不動産を買い取る方法です。

買い取った不動産会社は、不動産にリフォームやリノベーションなどを施すことで付加価値をつけ、会社の利益を上乗せした価格で再販売を行います。そのため、買取での価格は一般の購入希望者に買ってもらう仲介での相場価格と比べると3~4割程度安くなると言われています。

ですが、「この値段で買いますっ!」「この日までにお金を払いますっ!」と早々にスケジュールが決まるため、販売においての煩わしさがないメリットがあります。

【参照】離婚の売却での仲介と買取の選び方のポイント

5-4 住み替えローンと買取の関係

買取り業者さんは、買取価格が折り合えば実際の引き渡し期日には結構柔軟に対応してくれます。

「売主さんの都合に合わせる事で安く買わせてもらえるのなら」との思惑もあるのでしょうね。実際に3ヶ月程度の引渡し猶予はザラにあり、中には半年ぐらいの猶予を付けてくれる場合もあります。

こうして早々に自宅の売却価格を決めることができれば、あとは気に入った物件を探すことに専念するだけです。

住み替えローンを使っての住み替えを考える際には便利な「買取」ですが、気を付けなければならない点もあります。

それは、買取で売却をするのであれば、仲介での売却価格よりも3-~4割程度安くなることが一般的で、今回の例に当てはめると、自宅の売却価格は1,500万円ではなく、900万~1,000万程度が売却価格になります。

そのため住み替えローンのイメージは

(住宅ローンの残債:2,000万円)-(売却価格:900万~1,000万円)=残債1,000万~1,100万円
(新居の購入費用:2,000万円)+(残債1,000万~1,100万)=新しい住宅ローン:3,000万~3,100万円

になります。

住み替えローンを利用すると、思っていた以上に新しい住宅ローンの借入額が膨らむと思います。

「それでもローンを2本持つよりは」と考えるのか、「半年程度を耐えれば」と考えるのかは、ご自身でお考えになってください。

6. 離婚時にダブルローンを利用するために

メリット・デメリットを比較検討したうえでダブルローンを使ってみようと思ったら、気を付ける点と、やらなければいけないことがあります。

6-1 基本的にはアンダーローンの人にオススメ

「4-2 フツ~にやると審査は厳しい」で書いたように、審査基準は厳しいです。

「何とかなるんじゃない?」の金融機関に持ち込むにしても、アンダーローンじゃないとダメです。ただ、蛇の道は蛇で、オーバーローンでも何とかはなります。

ただし、自宅の売却に手こずる可能性は高くなるので、必然的にダブルローンの期間は長くなります。その期間を耐えきるだけの手持ち資金があることが条件になる点にご注意ください。

6-2 財産分与の話し合いをしっかりと

離婚においてお金の話しは重要です。お金の話しがまとまれば離婚は九分九厘まとまります。

財産分与をまとめるために自宅を売却するのですが、ダブルローンを利用する場合には売却時期や売却価格が未定の状態になります。

そのため、配偶者との財産分与の話し合いがより一層重要になってきます。

・いくらで売れるのか
・離婚後の売却だった場合の売却価格の確認方法は
・売却できるまでの生活資金はどうやって捻出するのか
・売れるまでのローンの支払いはどうするのか

などです。

ここがまとまらないと何も進みません。焦らずにじっくりと話し合うようにしてください。

まとめ

「離婚⇒売却⇒賃貸生活」が一般的なパターンですが、「今さら賃貸もなぁ」と考える人もいるのではと思い、今回のブログを書いてみました。

ただでさえ考える事が多い離婚のさなかに、新居の購入までは考えられないかもしれませんが、落ち着てからの時期にでも思い出していただければとも思います。

自宅の購入方法にはいろいろな方法があります。ケースバイケースでご対応いたしますので、何かお困りの際にはお気軽にお問い合わせください。



この記事を書いた人


 エイチ・コーポレーション 代表:林  裕 地


【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。

結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。

保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など

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