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離婚時に共有名義不動産を売却するための5つのステップ

離婚は役所へ提出する様々な書類の手続きとともに、共有名義の不動産の売却も進めなければいけません。この記事では、離婚時に共有名義の不動産を売却するための具体的な5つのステップを紹介します。

1. 離婚と共有財産の理解

婚姻中に夫婦が協力して築いた財産のことを「共有財産」いい、財産を所有している名義人が夫婦どちらか一方の場合でも、その財産を構築する上で片方にも貢献があった場合には共有財産に該当すると考えられています。

離婚時の財産分与では、それぞれの財産が共有財産かどうかを巡って言い争いになるケースも少なくありません。そうなった時のためにも「共有財産とはなんなのか」ということについてしっかりと認識をしておくことが必要です。

1-1 共有名義不動産とは何ですか?

1つの不動産を2人以上の複数人で所有者として登記をしている状態を「共有名義不動産」といいます。

主だったケースとしては、相続により親の家を兄弟姉妹で相続した場合や、マイホームを買う際に夫婦それぞれが住宅ローンを組んで購入した場合などが該当します。

マイホーム購入の際にどちらか一方の親からの援助があったり、独身時代の貯蓄から資金を投入したようなケースでの財産分与はちょっと気を付ける必要があります。

親からの援助や、独身時代に貯めたお金は「特有財産」となり、財産分与には含まれません。「(共有財産)-(特有財産)=財産分与の対象」になるため、単純に売ったお金を1/2に分けて終了ではないことに注意が必要です。

1-2 離婚時の共有名義不動産の法的な考慮事項

さらにもう一つ注意点があります。共有名義の不動産は所有者全員の同意がなければ売却することはできません。自分の持ち分のみを強引に売却することも可能は可能ですが、かなり非現実的です。

一緒に暮らすのがイヤで離婚した相手と、離婚成立後にも不動産の売却に関してかかわりを持つのは相当のストレスです。あとあとのストレスを考えると、離婚前に不動産の売却に関しての話しをまとめておく方がいいと思います。

2. 共有名義不動産の査定と評価

単独名義でも共有名義でも、売却に関してのプロセスは変わりません。査定を行い、販売活動をし、契約をして引き渡しをする、です。

ですが、離婚に伴う不動産売却の場合では、実際に売り出す「売却価格」の重要性は通常の売却の場合よりも重要性が増します。

そのため、売却価格を決める際の指標となる「査定価格」がより一層重要になってきます。

2-1 不動産の査定の重要性

大切な財産である不動産。誰しも少しでも高く売りたいものです。

売ったお金で施設に移ろう。売ったお金で住み替えをしよう。このような理由での売却であれば査定に来た不動産会社担当者の「これぐらいの金額で売りに出して様子をみてみませんか?」の提案にのることもできるでしょう。時間をかければ思いのほか高い金額で売れるかもしれません。

ですが、離婚のケースで共有名義の不動産を売却する時にこの考えは危険ではないでしょうか。どちらか一方のみの所有「単有」であれば、極端な話し「売れたらお金振り込んでねぇ」で手を切れますが、共有名義の場合は節目節目で書類に対して双方の署名・押印が必要になります。

書類のやり取りは時間がかかりますが郵送で対応することも可能です。ですが、売れなかった場合に値下げをするかどうか。購入希望者からの値引きの交渉などが入った場合などに、相談なしに相手方の一存で勝手に決められても困りものです。

早々に売却を終わらせ、財産分与を決定し新生活をスタートさせるためには、「売れるかも」ではなく「売れる」価格での短期勝負が必須条件です。

媒介契約を取るためだけのいい加減な高額査定金額を提示する不動産会社には注意をしてください。

2-2 評価額を決定するための要因

売れると思う価格から10%安い価格。短期決戦の場合にはこの価格での販売がおススメです。

査定自体は3~5社の不動産会社にしてもらうのが必須です。間違っても1社単独で決めないでください。

一番高い査定価格は除外し、残りの価格の平均を取るといい感じの価格になると思います。通常の3~6ヶ月程度の販売期間での売却を目指す場合はこの価格でスタートしてもいいのですが、離婚の際にはこの価格から10%程度安い価格で売り出すことをおススメします。

なぜなら、世間で言うところの「相場」には2種類あり、平均を取った価格が「売却相場」、これがインターネットのポータルサイトなどで一般の方が見ることができる価格です。

ですが、実際に契約に至った「成約相場」は、売却相場から10%程度安い価格になるケースが多くなります。

早期売却を目指し、鮮度の高い売り出し直後からの反響を増やすためにも、「10%安く」を意識してみてください。

3. 離婚合意書の作成と不動産の処分方法

離婚を考え色々と調べていくと「離婚合意書」という言葉を目にすることがあります。離婚合意書とはいったいどのようなもので、不動産の処分にどのようにかかわってくるのでしょうか。

共有名義の不動産の処分方法とあわせて見ていきましょう。

3-1 離婚合意書の重要性と内容

離婚において必ずしも必須ではないですが、一般的には、離婚をすること、離婚後の親権や子どもの養育費に関すること、財産分与や慰謝料などのお金に関する約束事などを記載したものが「離婚合意書」と呼ばれています。

特に定型のものがあるわけでもないようで、かく言う私も、離婚に際しては元嫁がネットからダウンロードした書式に色々と書きました。

双方の預貯金の額や子どもの養育費、住んでいたマンションに関しては「これぐらいで売れるだろう」「私の親からの援助が〇〇円あったから、これは特有財産として除外させてもらう」
こんな感じの内容で双方の署名・押印をしたものを2枚作成して完了でした。

文章にすると簡単で軽い内容に思われるかもしれませんが、署名・押印した時点である意味「契約書」になるため、合意内容に関してはしっかりと確認するようにしてください。後になって「そんなつもりはなかった」と言い出しても後の祭りです。

3-2 共有名義不動産の処分方法と選択肢

離婚の際の共有名義の不動産の処分方法にはどういったものがあるのでしょう。

処分方法としては単純に

・売却する
・どちらか一方が住み続ける

この2パターンです。

大多数のケースでは売却を選択します。

住宅ローンが残っている場合、売却額が住宅ローンを上回る「アンダーローン」状態であれば問題なし。住宅ローンの額が売却額を上回る「オーバーローン」の状態であれば、ちょっと問題です。足りない部分の現金を補填する方法を考える必要が出てきます。いくつか方法はありますが、各人の状況により使える方法が異なりますので、気になる方はお問い合わせください。

どちらか一方が住み続ける場合には色々注意点があります。

「夫婦で話し合って、名義を一方に変更しましょう」と書いてあるブログもありますが、話し合いで解決するような簡単なものではありません。

ローンが無い場合にはできそうな気がします。ですが、「離婚に伴う財産分与」と考えると、名義は財産です。相手に買い取ってもらわないと割りが合いません。【2-1 不動産の査定の重要性】で書いたように、査定をして「売れるであろう」価格をベースにして持ち分に該当する現金をもらう必要があります。

「住み続ける」のが前提なので、対象の不動産を売却をして現金を手にすることができません。不動産以外の残りの財産から現金を捻出しなければいけません。なかなかヘビーな条件ではないでしょうか。

ローンが残っている場合ではより一層に困難です。共有名義になっているという事は、購入時にお互いを連帯保証人とするペアローンを利用しているケースがほとんどだと思います。
「1人では買えないから2人の収入で」というニコイチを条件に住宅ローンを組んでいるため、まず銀行の許諾をとることはできません。

大部分の銀行が連帯保証人として認めるのは「親・配偶者・子」です。

「子」の場合は、子どもが将来自分の家を購入しようとした時に住宅ローンを組むことができなくなります。離婚で迷惑をかける上に、子どもの将来にも不安を抱かせるのは親としていかがなものでしょう。

「配偶者」は、離婚をするのだから当然いません。万が一、離婚成立後すぐに再婚するからとの条件を出したとしたら…その人とはいつ知り合ったの?不倫じゃない?となって慰謝料案件になります。

残るは「親」ですが、これもかなり難しいです。まず親自体が住宅ローンを持っていない事。年齢の問題と完済までの期間の安定した収入が見込めるなどの条件をクリアする必要があります。
過去にお一人だけこの方法で住宅ローン問題をクリアしたお客様がいますが、かなりのレアケースですし、義父との交渉もかなり困難を極めました。

最も避けてほしい悪手は、「不動産に関しての財産分与は諦める。残りのローンは住み続ける相手方が責任を持って払っていく」のパターンです。

相手が転職・失職した。病気やケガで仕事ができなくなった。などの理由でローンを払えなくなった時には「連帯保証人である自分」に支払いの義務が発生します。「離婚して他人になったのだから関係ない」は銀行には通用しません。連帯保証人である以上、問答無用で支払わなければなりません。

結局のところ、離婚時の共有名義の不動産の処分の方法としては、売却の一択になると思います。オーバーローン状態の場合は現金のロスが発生しますが、そこをどのように話し合って解決していくのかがポイントになってきます。

4. 不動産売却手続きと法的手続き

財産分与の話し合いがまとまったら、いよいよ実際の販売活動に移っていきます。おおまかな流れを見ていきましょう。

4-1 売却手続きの流れとポイント

販売活動を依頼をした不動産会社がチラシやインターネットなどを使っての宣伝広告を行い、問い合わせのあった購入検討者の内覧、気に入れば住宅ローンの審査を行い、契約を締結するのがおおまかな流れです。

この辺りは不動産会社にお任せしてしまって大丈夫です。

ポイントはやはり「内覧」ですね。時勢にあった販売価格で適切な宣伝広告を行っていけば、3ヶ月~6ヶ月程度で契約まで至るケースが多いです。状況が許せば「10%安い価格」で販売スタートできると更に早期契約が見えてきます。

4-2 引渡しまでの手続きと注意点

住宅ローンが残っている場合では、契約が終わったら銀行への連絡をしましょう。

事前に売却する旨の連絡をし、引き渡し日にあわせて「全部繰り上げ返済」の手続きを早めに終わらせておきましょう。登記をお願いする司法書士への連絡は、不動産会社の担当者に確認してください。

全部繰り上げ返済の手続きは大部分の銀行が窓口での取り扱いです。実際の返済も手続きから10日~2週間程度かかることもあるため、有休を使って早め早めに手続きを済ませておきましょう。

5. 売却後の手続きの注意点

売却後のお金に関しての簡単な注意点です。

5-1 経費の精算と売却代金の分割

財産分与のための売却なので、売却のために必要となった仲介手数料や登記費用、銀行での手数料なども、売却代金と同じく各々の持ち分に応じて按分してください。

不動産の購入代金よりも高く売れて利益が出た場合には所得税や住民税などの税金が課税されます。

ですが、不動産の売却に関しては「居住用財産の3,000万円特別控除」という仕組みがあり、今の時代ではほとんどのケースで非課税となっています。3,000万円特別控除に関しては、また別の機会にご説明します。

まとめ

今回は、共有財産や共有名義の不動産売却についてご説明してきました。

単独名義の不動産に比べて気を付けることも多くなりますが、一つ一つのステップをしっかりとクリアしていくことで、必ずいい結果につなげることができます。

自分一人で、または夫婦だけで悩み苦しむのではなく、お気軽にお問い合わせください。実体験を交えて、皆さんのお役に立てるようにお手伝いをさせていただきます。



この記事を書いた人


 エイチ・コーポレーション 代表:林  裕 地


【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。

結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。

保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など

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