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夫婦の財産はどう分ける?熟年離婚の財産分与と不動産売却を考える

婚姻期間20年以上で50歳代以上の夫婦の離婚を熟年離婚と呼ぶそうです。つい先日、知り合いの知り合い(まぁ、他人ですね)が離婚を考えているそうで軽~く相談されました。今回は、その人が悩んでいる内容や、その時にアドバイスさせてもらった内容をまとめてみました。熟年離婚を考えている人の参考になるかは分かりませんが、ちょっとした暇つぶしの読み物として読んでいただければ幸いです。

1. 熟年離婚が増えているそうです

冒頭に書いたように、一般的に熟年離婚の定義は「婚姻期間20年以上で50歳代以上の夫婦の離婚」のようです。

本当に熟年離婚が増えているのかを、ちょっとだけデータを探して調べてみました。

1-1 離婚の件数自体は減少傾向

厚生労働省が公表している「令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」の都道府県別にみた年次別離婚件数を見てみると、2000年には年間で264,246組の離婚があったのが、2023年には183,814組の離婚となっていて、全体的に減少傾向のデータになっています。

1-2 熟年離婚は増えているのか?

同じく、年次別にみた同居期間別離婚件数及び百分率並びに平均同居期間を見てみると、確かに「婚姻期間20年以上」の夫婦の離婚件数は少しずつ増えているのが分かります。

どちらの統計もExcelのデータをダウンロードできるので、興味があったらダウンロードしてみてください。

1-3 どうして熟年離婚が増えているのか

ホントの理由は当人たちに聞かないことには分かりませんが、一説によると「寿命が延びたことで、子どもが成人して夫婦2人で過ごす時間が増え、性格の不一致を原因とする離婚が増えてきた」らしいです。

たしかに、一緒にいる時間が長くなれば、それまで気づかなかった相手のイヤな所も目につくようにはなるでしょうし、これからも熟年離婚は増えてはいくのでしょうかね。

2. 離婚と財産分与の関係

夫婦が離婚するのであれば財産分与が付いて回ります。財産分与の基本をおさらいしておきましょう。

2-1 財産分与の対象

財産分与の対象になるものは、結婚期間中に夫婦が協力して築いた財産で、一般的には下記のようなものが該当します。

・現金や預貯金
・生命保険
・自動車
・退職金
・宝石などの貴金属
・不動産(自宅)

2-2 対象とはならない特有財産

財産分与の対象とならない「特有財産」は次のようなものが該当します。

・独身時代に貯めていた預貯金
・独身時代にそれぞれがした借金
・結婚後にそれぞれが「個人的に」した借金
・それぞれの家族からの贈与や相続した財産

2-3 熟年離婚における財産分与

長く一緒に暮らしていればどうしても「共有財産」が増えてきます。

預貯金もそうですし、車や貴金属などもあるでしょう。20年ぐらい前に加入したような個人年金であったり養老保険なんかは、けっこうな利率で保険会社が運用してくれているので解約返戻金もそれなりの額になると思います。

同じ会社に勤めている人であれば、退職金もある程度の額が計算できるかもですね。

【参照】離婚時の共有財産の分配と財産分与の注意点

さらに、自宅を購入している夫婦で、購入時に片方の親からの援助があったり、親がお亡くなりになった際の相続財産で繰り上げ返済を行ったようなご夫婦だと、自宅という共有財産に特有財産が混じった状態になるので、ちょっとややこしい財産分与になります。

まさに、今回僕へ相談を持ち掛けてきた知り合いの知り合いもそのパターンです。

3. 今回の相談内容は

不動産の財産分与はたださえこじれがちです。そこに特有財産まで含まれてしまっていると更にややこしくなってしまいます。

相談された内容を少し整理していきます。

3-1 購入時に親から援助があった

相談者さんは長男だったので、将来的に「親との同居」の可能性もあったそうです。どちらかがお亡くなりになって「片親」になってからの話しではあったようですが。

そのため、約20年前に、同居を見越して「ちょっと広めの一戸建て」を購入したそうです。仮に4,000万円の家としておきます。

購入の際に、ご両親から500万円(仮)の援助があったそうです。

3-2 お父さんがお亡くなりになった

ご自宅を購入して5年ぐらいした時に、奥さんのお父さんがご病気でお亡くなり、遺産相続があったそうです。

住宅ローン控除が終わったタイミングで、奥さんに入った遺産を使って300万円(仮)を繰り上げ返済したそうです。

ここまでは、世間ではよくある話しではないですか?

ですが、夫婦の共有財産の中に、夫婦それぞれの特有財産が混じった、とってもやっかいな状態になってしまっています。

3-3 そして離婚が持ち上がった

事の経緯は省くとして、離婚の話しが持ち上がったようです。

4,000万円の家の購入時に親からの500万円の援助。300万円の繰り上げ返済をしているとはいえ、まだ住宅ローンも残っている。

「親との同居を前提に買ったこの家を、離婚に伴う財産分与としてどのように扱うのがいいのか」が相談内容です。

4. 財産分与の解決方法としては

財産分与の方法に正解はないのですが、離婚経験者として、不動産屋として、今回の相談内容に対してのアドバイスをまとめていきます。

4-1 親との同居は一旦白紙に

同居することにこだわると話しがややこしくなり、まとまる話しもまとまらなくなるので、親に対しては「同居しないわけではないが、事が納まるまでは一旦白紙に」と説得するようにアドバイスしました。

4-2 共有財産と特有財産の按分計算

購入時の諸費用は夫婦が出したようなので、共有財産の自宅における、夫婦それぞれの特有財産の按分は

 ご主人 500万円/4,000万円=12.5%

 奥さん 300万円/4,000万円=7.5%

この按分をベースに考えるようにアドバイスしました。

4-3 ローンの残債は共有財産

住宅ローンが少し残っているようでしたので、この残債に関しては夫婦の共有財産として、それぞれが1/2ずつ負担することで合意してもらいました。

4-4 問題は自宅の売却額の決定です

売却額に関しては夫婦間の見解の相違が大きかったです。

ご主人は「築20年の木造住宅なので.…」の考えですが、奥さんは「査定してもらったらこんなに高い査定額だった」の考えです。よくある話しです。今のご時世、うかつに不動産の査定をすると、とんでもない査定額を出してくる不動産屋さんがいますからね。

【参照】失敗せずに一括査定サイトを利用するための5つのポイント

この部分に関しては、奥さんに査定額と成約価格の違いを丁寧に説明をするしかありませんでした。実際に成約事例と照らし合わせると、査定額とは300万ぐらいの差がありましたから。

成約事例と照らし合わせると、2,000万円(仮)ぐらいでは売却できそうなご自宅でした。

なので、ご夫婦それぞれの特有財産としては

 ご主人 2,000万円×12.5%=250万円

 奥さん 2,000万円×7.5%=150万円

となり、ご自宅の財産分与の金額としては

 ご主人 (2,000万円-400万円)÷2+250万円=1,050万円

 奥さん (2,000万円-400万円)÷2+150万円=950万円

この金額をベースに、ご夫婦で話し合っていただくのがいいのではとアドバイスしました。

まとめ

こんな感じで、今回の知り合いの知り合いの方には財産分与に関してのアドバイスをさせてもらいました。

ホントに離婚するのかどうかも分かりませんし、ご自宅を売却することになった時にお手伝いをさせていただけるのかも分かりませんが、ご縁があってお話しができたので、多少なりとも役に立ったのならいいですね。

このように、実際に不動産の売却を伴わないご相談でも、時間があれば対応いたしますので、離婚や不動産の売却でお悩みの際にはお気軽にお問い合わせください。



この記事を書いた人


 エイチ・コーポレーション 代表:林  裕 地


【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。

結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。

保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など

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