BLOG ブログ

熟年離婚でマンションはどう分ける?財産分与のベストな方法を解説

20年以上連れ添ったパートナーとの熟年離婚が増えているようです。そんな夫婦の場合では共有財産も増え、マンションのような不動産を所有している場合も多くあり、名義や住宅ローンの有無、実際の財産分与の額など、一時の感情だけで決められない様々な問題が絡みあってきます。
今回は、増加傾向にある熟年離婚で、マンションなどの不動産を含めた財産分与をどうすればよいのかを解説します。

1. なぜ熟年離婚が増えているのか

50代・60代の離婚、いわゆる「熟年離婚」が年々増えています。

長年連れ添ったパートナーとはいえ、定年後の生活への不安や、長年に渡っての価値観のズレ、そして、以前と比べて経済的にも自立した女性の割合の増加がその背景にあるようです。

まずは、熟年離婚が増えてきた社会的な背景について整理してみましょう。

1-1 熟年離婚が増えている時代背景

厚生労働省の統計によると、婚姻者数全体に占める離婚件数は減少傾向にある一方で、「結婚30年以上の夫婦の離婚件数」は、1995年から2000年にかけて約45,000件から約94,000件と、およそ2倍以上に急増しています。

増加している理由と一つとしては、長年連れ添った夫婦が「子どもの独立」や「定年退職」をきっかけとして、第二の人生をスタートさせるために離婚をを選ぶケースが増えていると考えられます。

「夫は外で稼ぎ、妻は家庭を守る」という時代から、契約や派遣社員などの立場でも女性が再就職をすることも増え、ある程度の収入を確保することができるようになってくることで、「残りの人生、自分一人でもなんとかなるんじゃない?」と思う人が増えてきていることも理由になっていると思います。

生きていくにはお金が必要ですから、お金の目途がつくのであれば「気に入らない相手」とこの先も一緒に暮らしたいとは思わないでしょうね。

1-2 定年後の生活不安と夫婦のすれ違い

家や子どもの事は妻に任せて、自分は仕事を中心に過ごしてきた夫と、「夫は家にいないもの」と認識し、家事や育児などを自分のリズムでこなしてきた妻。

そんな妻にとって、「定年したら夫が毎日家にいる」なんて生活はストレス以外の何物でもないでしょうね。

「なにもせずにゴロゴロして邪魔くさい」「視界に入ってくるだけでストレスが増える」など、自分が長い間に築き上げてきた日常とは違う、小さな違和感が積もり積もって離婚に至るケースも少なくありません。

1-3 女性の社会進出による経済的自立の影響

昔懐かしの「女は結婚したら専業主婦」の時代では、「離婚したら生活できない」という理由で、離婚をしたくても我慢していた女性も多かったでしょう。

しかし現在では、パートや契約社員として安定した収入を得る女性も増えてきています。その結果として、「この先も我慢して一緒にいるより、自分の力で好きに生きていきたい」と考える女性も増えてきているようです。

実際、お金の工面さえつけば1人で生きていく方が気楽ではありますし、他人とのコミュニケーション能力も男性よりも女性の方が優れているため、離婚後に活き活きとしているのは男性よりも女性の方が多いような気がします。

2. 熟年離婚では男性の方が後悔しがち

会社では部下や同僚などと一緒の時間が長いため気付きづらいのですが、案外と孤独に耐えられない、寂しがり屋は男性に多い傾向があるようです。

そのため、熟年離婚をして1人での生活に直面すると、結婚していた時には気づかなかった「妻の支え」の大切さに気付き、離婚したことを後悔することもあります。

ここでは、熟年離婚した男性が後悔する典型的な理由を見ていきましょう。

2-1 生活力不足による不便と孤独

「昭和の男」にありがちな、炊事や掃除などの家事全般を妻に任せきりだった男性は、離婚後の独身生活では一気に不便になります。

「料理ができない、めんどくさい」などの理由で外食が続くことで健康管理が疎かになり、体調を崩す人も多いでしょう。

掃除や洗濯の仕方が分からず、家の中が荒んでいく「男やもめに蛆がわく」状態に陥る人もいるでしょう。

また、「ただいまー」と家に帰っても誰もいないことが寂しく、夜な夜な遊び歩くような人もいるかもしれないです。

汚いのがキライで、出不精・引きこもりの僕なんかは、毎日掃除機をかけて、一人でU-NEXTを見て独身生活を楽しんでいますが、周りに聞くとこれはレアケースで、いろいろと苦労をしている男性の方が多いようですね。

時代は「令和」ですから、早めに「昭和」からは脱却しておいた方がいいと思いますよ。

2-2 子どもと疎遠になる

これは致し方ないかと。どうしても親権は母親が持って行くことが多く、父親は子どもとは疎遠になってしまうのではないでしょうか。

「面会交流」というほどの堅苦しいものではなくとも、休みの時に食事に行ったりする程度のことを頑張って繰り返すしかないのかと思います。

「何かあった時には頼りになる存在」でいられるように頑張りましょう。

2-3 老後の不安と孤独死リスク

老後の不安は男女問わずですが、孤独死のリスクは男性の方が高いでしょうね。

コミュニケーション能力の差から、男性は女性と比べて案外と人見知りの人が多いと思います。そのため、隣近所の人と顔見知りになる事もなく、習い事や地域の行事に参加したりすることも少ないでしょう。

家に一人でいる時間が長くなり、「今日も誰とも話しをしなかった」なんて日々が続くかもしれないです。

女性と比べれば金銭面での心配は少ないかもしれませんが、社会的な孤立、「心の孤独」に陥りやすいのがお一人様男性の特徴かもしれないですね。

3. 女性が熟年離婚で後悔するケース

男性とは違った面で、女性も熟年離婚後に「こんなはずでは…」と感じることがあります。

3-1 金銭面での厳しい現実

出産、育児のために仕事のキャリアが中断してしまうため、男性と比べて金銭面では苦労することが多くなります。

正社員で再就職できていればまだ安心ですが、契約や派遣のように雇用面での不安がある人の場合ではなおさらです。

離婚することを優先しすぎて生活に困窮する事のないように、しっかりとした収入面での計画と、後述する「財産分与」に関しても安易に考えずに慎重に対応するようにしましょう。

3-2 孤独と社会的つながりの喪失

男性よりもコミュニケーション能力が高いとはいえ、「身近な人」がいなくなることには変わりありません。子どもが大きくなって独立してしまうと、子ども関係でのお付き合いも疎遠になりがちです。

「離婚して1人になった方が気楽でいい」と思っていたのに、実際に人との関わりが少なくなってくると、人の大切さを痛感するケースも多いです。

近所の方や仕事先での友人・知人など、日々のコミュニケーションに気を付けることも大切になってきます。

3-3 子どもの反応へのショック

無関係、無責任な親族や友人からの言葉はスルーできたとしても、子どもから「離婚しないでほしかった」と言われてしまい、精神的に落ち込む女性もいます。

親権を持つことが多い女性の場合、離婚したいと思う気持ちに蓋をする必要はないと思いますが、子どもとはしっかりと話し合い・相談をしておいた方がいいと思います。

この場合、旦那はほっといていいです。話し合いをしたとしても恐らく建設的な話しにはならないと思います。

4. 熟年離婚を後悔をしないためにも「財産分与」はしっかりと

熟年離婚では、夫婦が長年築いてきた財産の分け方が大きな課題になります。

とくにマンションなどの不動産は、名義人だけの所有ではなく「夫婦の共有財産」として扱うことになり、財産分与の方法を正しく理解する必要があります。

4-1 財産分与の基本ルール

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚にあたって公平に分ける制度です。

たとえマンションの名義が夫1人の単独所有であっても、夫婦として家庭を築き、支えてきた妻にも半分の権利があります。

財産分与の原則は、婚姻期間中に築き上げた財産は「夫婦それぞれが2分の1ずつの権利を持つ」が基準です。

その一方で、夫もしくは妻が、結婚前に購入した資産や、相続・贈与で得た財産は「特有財産」として分与の対象外となります。

4-2 熟年離婚で問題が複雑になる理由

婚姻期間が長期に渡る熟年離婚では、共有財産も多種多様化しています。

マンションなどの不動産に関しては、住宅ローンの有無や残債額。年齢によっては退職金の見込み額も調べる必要があります。年金や貯金もありますし、最近でしたら株や債券などの投資資産も財産分与の対象となり、単純に「半分ずつ」とはいきません。

さらに、感情的な対立がある夫婦の場合でしたら、冷静に財産分与の話し合いを進めることが難しくもなります。

そのため、まずは「どの財産が共有で、どれが特有なのか」をしっかりと区分けすることが必要となり、財産の額によっては弁護士に依頼することも検討する必要がでてきます。

4-3 財産分与における不動産の位置づけ

不動産は現金のように簡単に分けられないため、分与方法を選ぶ必要があります。

代表的な方法としては「売却して現金を分ける」「一方が住み続け、相手に相応の金銭を払う」「共有のまま維持する」の3つです。

どれを選ぶかは、住宅ローンの残債や家族構成、今後の生活設計によって異なります。

5. マンションの分け方は3つ!それぞれのメリット・デメリット

マンションを財産分与するには主に3つの方法があり、どの方法にもメリットとデメリットがあり、夫婦の状況によって「ベストな選択」は異なります。

5-1 売却して現金で分ける方法

もっともシンプルで分かりやすくトラブルが少ないのが「売却して現金で分ける」方法で、マンションを売却し、住宅ローンを完済したうえで残ったお金を折半します。

売却してしまえばマンションの所有権も住宅ローンもなくなり、離婚後にも相手との関係を持つ必要もありませんので将来的にトラブルに巻き込まれることもなく、1番スッキリとした財産分与の方法となります。

ただし、マンションを売却するためには住宅ローンを完済する必要があり、住宅ローンが残っている場合には売却額が住宅ローンの額を上回る「アンダーローン」の状態であることが条件です。

売却額が住宅ローンの額を下回る「オーバーローン」の場合には、足りない額を手持ち資金で補填する必要があるため注意が必要です。

5-2 どちらかが住み続ける方法

子どもを転校させたくない場合や、生活環境を変えたくない場合に選択肢に上がるのがこの方法です。

ただし、共有財産をどちらか一方が所有・使用し続けることになるため、色々と注意点があります。

 住宅ローンが完済してある場合 この場合、住み続ける一方が、家を出て行く相手に、財産分与額としてマンションの売却相当額の1/2を「代償金」として支払う必要があります。

現金一括で支払うのか、月々の分割払いで支払うのかは当人同士で決めればいいのですが、分割払いの場合には、将来のトラブルを防止するためにも公正証書ぐらいは作っておいた方が安心かと思います。

 住宅ローンが残っていてアンダーローンの場合 この場合、住み続ける一方が、家を出て行く相手に、「(売却想定額)-(住宅ローンの残債額)=(手残り額)÷2」を財産分与の代償金として支払うことになります。

ただし、あくまでも「マンションを売却したら」の話しであるため、実際のところでは「住宅ローンを(どちらか一方が)or(2人で)支払い続ける」ことでの決着になるのではないでしょうか。

 住宅ローンが残っていてオーバーローンの場合 この場合は、「(売却想定額)-(住宅ローンの残債額)=完済できない住宅ローン額(負債)」となり、マンション自体は財産分与の対象とはなりません。

そのため、離婚後も一方がマンションに住み続けるのであれば、単純に住宅ローンを支払い続けるしか方法はないです。

住宅ローンの支払い方法としては、アンダーローンの場合と同じく(どちらか一方が)or(2人で)になります。


どのような状態であれ、離婚後も「どちらかが住み続ける」のは色々とリスクがあるのでオススメはしづらいです。

詳しくはこちらを参照してください。
【参照】離婚してからも今の家に母子が住み続けることは可能?その方法とは

5-3 共有名義のまま維持する方法

ぺアローンや収入合算を利用してマンションを購入した夫婦の場合では、離婚後も共有名義を継続し当面の売却を避ける方法もあります。

ただし、離婚後にもどちらかが住むのか、もしくは空き家にするのか。税金や管理費の負担をどうするかなど、細かな取り決めをしなければトラブルになる可能性は高くなります。

そのため、この方法を選ぶ場合は、「一定期間後には売却する」などの明確な合意を文書に残すことが必須になります。

まとめ

熟年離婚では、マンションなど不動産の財産分与がもっとも難しく、一時の感情ではなく、法律やお金、離婚後の生活の3つの視点から冷静に判断することが何より大切です。

売却・名義変更・共有維持など、それぞれの方法を理解したうえで、自分たちにとってのベストな選択を見つけましょう。



この記事を書いた人


 エイチ・コーポレーション 代表:林  裕 地


【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。

結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。

保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など

CONTACT
お問い合わせ

離婚時の不動産売却なら
エイチ・コーポレーションへ