最近、不動産の一括査定サイトからの営業電話が増えてきました。まぁ時期的にも売却依頼が増える時期ではあるのですが、実際のところ「売却市場の変化」「査定価格の歪み」「不動産会社の戦略転換」などの要因があるのではと思います。今回は、一括査定サイトの営業が増えている本質的な理由を分解し、わかりやすく解説していきます。

1. 売却案件の奪い合いが激化
不動産売却市場において大切なことは「案件の質と量のバランス」です。
いつの時代も「家を売ろうかな」と考える売却検討者自体は一定数存在するのですが、そこから実際に「家を売ろう!」と行動をおこし、媒介契約に至る案件は限られています。
この「売却案件の質と量のバランス」の構造により、不動産会社同士の媒介獲得競争は年々激化しており、一括査定サイトを通じた売却案件の奪い合いが顕著(過激に?)になっています。
いつの時代も「家を売ろうかな」と考える売却検討者自体は一定数存在するのですが、そこから実際に「家を売ろう!」と行動をおこし、媒介契約に至る案件は限られています。
この「売却案件の質と量のバランス」の構造により、不動産会社同士の媒介獲得競争は年々激化しており、一括査定サイトを通じた売却案件の奪い合いが顕著(過激に?)になっています。
1-1 売却案件のホンキ度の低下
最近の不動産売却市場の傾向として、「売ろうかな」「売りたいな」と考える売主からの売却相談の数自体は減っていないものの、「売るっ!」と考える「本気度の高い売主」の数は案外と少ない傾向にあります。
その背景としては、住宅ローン金利の上昇や、それに伴う不動産市況の不透明感から「今は様子見なのでは?」と考える層が増えているためです。
その結果、売却案件を獲得したい不動産各社としては、少ない優良案件を奪い合う構図となり、一括査定経由の「なんとなく査定を」と考えるライト層の売却案件でも徹底的に追客する動きが強まっています。
その背景としては、住宅ローン金利の上昇や、それに伴う不動産市況の不透明感から「今は様子見なのでは?」と考える層が増えているためです。
その結果、売却案件を獲得したい不動産各社としては、少ない優良案件を奪い合う構図となり、一括査定経由の「なんとなく査定を」と考えるライト層の売却案件でも徹底的に追客する動きが強まっています。
1-2 しつこい電話営業
サイトの構造上、一括査定サイトは複数の不動産会社に1件の案件を同時に送客する仕組みのため、1件の案件に対して複数の不動産会社が同時に動きます。
そして、同時に動く不動産会社として重要になるのが「初動の速さ」です。
1つの案件に対して、最初に査定依頼主に接触できた会社が優位に立つため、「まずは電話を」と考えて電話営業のスピード競争が発生します。このあたりは引越し料金の一括査定サイトの仕組みと同じですね。
その結果、軽い気持ちでサイトを利用した「ライト層」の査定依頼に対しても何度も電話がかかる状況が生まれ、売却査定の営業量自体が増加しているように見える「錯覚」が発生しているのです。
そして、同時に動く不動産会社として重要になるのが「初動の速さ」です。
1つの案件に対して、最初に査定依頼主に接触できた会社が優位に立つため、「まずは電話を」と考えて電話営業のスピード競争が発生します。このあたりは引越し料金の一括査定サイトの仕組みと同じですね。
その結果、軽い気持ちでサイトを利用した「ライト層」の査定依頼に対しても何度も電話がかかる状況が生まれ、売却査定の営業量自体が増加しているように見える「錯覚」が発生しているのです。
1-3 媒介を取ることが目的に
2. 高額査定競争の歪み
一括査定の構造的な問題として、「高い査定価格を提示した会社が選ばれやすい」という傾向があります。
この「高額査定を提示する会社が有利になる」サイト設計により、本来の「売れる価格」である市場価格とは乖離した高額査定が増え、結果的に不動産業界全体のバランスが崩れ始めています。
この「高額査定を提示する会社が有利になる」サイト設計により、本来の「売れる価格」である市場価格とは乖離した高額査定が増え、結果的に不動産業界全体のバランスが崩れ始めています。
2-1 売主は少しでも高く売りたい
売主の心理としては「少しでも高く売りたい」というニーズは当然ですが強く、結果として一括査定サイトでは最も高い査定額を提示した会社に媒介が集まりやすくなります。
このため、一括査定サイトから集客をする不動産会社は、「売れる価格」ではなく「媒介を取れる価格」を提示する傾向が高くなります。これがいわゆる高値預かりの増加につながり、実際の販売現場での歪みに繋がっています。
このため、一括査定サイトから集客をする不動産会社は、「売れる価格」ではなく「媒介を取れる価格」を提示する傾向が高くなります。これがいわゆる高値預かりの増加につながり、実際の販売現場での歪みに繋がっています。
2-2 買主は少しでも安く買いたい
いくら高額査定で媒介を取ったとしても、実際の市場で売れるとは限りません。
「高く売りたい売主」と「安く買いたい買主」の意向のミスマッチから、結果として販売価格の改定や販売期間の長期化が発生し、それは不動産会社としての広告費や営業コストが嵩む要因になります。
相次ぐ値下げや長期間の販売期間の結果として売主の気持ちも萎え、成約に至らないケースも増えることが、一括査定サイトからの集客は不動産会社にとっては収益性の低い案件となります。
この「取れても儲からない構造」が、不動産会社の一括査定に対するスタンスを変化させています。
「高く売りたい売主」と「安く買いたい買主」の意向のミスマッチから、結果として販売価格の改定や販売期間の長期化が発生し、それは不動産会社としての広告費や営業コストが嵩む要因になります。
相次ぐ値下げや長期間の販売期間の結果として売主の気持ちも萎え、成約に至らないケースも増えることが、一括査定サイトからの集客は不動産会社にとっては収益性の低い案件となります。
この「取れても儲からない構造」が、不動産会社の一括査定に対するスタンスを変化させています。
2-3 案件を吟味する傾向に
3. 不動産会社の戦略転換期
少しずつではありますが、不動産会社も集客戦略そのものを見直し始めています。
待っていれば勝手に集客してくれる一括査定サイトへの依存度を下げ、自社サイトでの集客やリピート・紹介での顧客獲得に注力する動きが広がっています。
この戦略転換が、一括査定サイトの営業活動増加と密接に関係しています。
待っていれば勝手に集客してくれる一括査定サイトへの依存度を下げ、自社サイトでの集客やリピート・紹介での顧客獲得に注力する動きが広がっています。
この戦略転換が、一括査定サイトの営業活動増加と密接に関係しています。
3-1 不動産業界は広告宣伝費が高い
売却検討客を集客するための一括査定サイトだけではなく、購入検討客を集客するためのスーモやアットホームなどのポータルサイトなど、毎月の広告宣伝費は年々上昇しており、費用対効果の見直しは避けられない状況です。
そのため、自社ホームページのSEO対策やSNS運用などに軸足を移す会社が増えています。こうすることで、外部プラットフォームへの依存度を下げ、広告宣伝費を削減する動きが加速しています。ある意味、不動産会社的なSDGsですね。
そのため、自社ホームページのSEO対策やSNS運用などに軸足を移す会社が増えています。こうすることで、外部プラットフォームへの依存度を下げ、広告宣伝費を削減する動きが加速しています。ある意味、不動産会社的なSDGsですね。
3-2 リピート・紹介の少ない業界ですが
令和になっても「家は一生に一度の買い物」といった昭和の感覚がはびこる日本において、リピート客の獲得はほぼほぼ見込めません。
そのため、過去に成約した顧客からの紹介による売却(購入)案件の重要性も再認識されています。
かつての信頼関係の下に発生するこれらは案件は、査定価格もじっくりと相談・打ち合わせをした結果として提示できるため、短期間での売却にも繋がりやすく、結果として収益性も高くなりやすいのが特徴です。
そのため、一括査定のようなムダに競争の激しいチャネルよりも、自社顧客基盤を強化する方向にシフトする不動産会社が増えています。
そのため、過去に成約した顧客からの紹介による売却(購入)案件の重要性も再認識されています。
かつての信頼関係の下に発生するこれらは案件は、査定価格もじっくりと相談・打ち合わせをした結果として提示できるため、短期間での売却にも繋がりやすく、結果として収益性も高くなりやすいのが特徴です。
そのため、一括査定のようなムダに競争の激しいチャネルよりも、自社顧客基盤を強化する方向にシフトする不動産会社が増えています。
3-3 一括査定サイトとしては困った状況に
4. 一括査定サイト側としての事情
一括査定サイト側にも営業を強化せざるを得ない理由があります。
サイトのビジネスモデル上、掲載企業数や案件消化率が重要な指標となるため、不動産会社の動きに応じて積極的な営業活動が必要になってきます。
サイトのビジネスモデル上、掲載企業数や案件消化率が重要な指標となるため、不動産会社の動きに応じて積極的な営業活動が必要になってきます。
4-1 査定依頼の増加≠売り上げ増加ではない
一括査定サイトの収益は、査定依頼の案件に対して応札する不動産会社からの課金によって成り立っています。【詳しくはこちら】失敗せずに一括査定サイトを利用するための5つのポイント
そのため、登録企業の継続率や応札数、新規加盟数の増加は重要な指標です。
もし既存登録企業の応札数が減少すれば、その分を新規開拓で補う必要があり、結果として不動産会社への営業電話が増える要因となります。
そのため、登録企業の継続率や応札数、新規加盟数の増加は重要な指標です。
もし既存登録企業の応札数が減少すれば、その分を新規開拓で補う必要があり、結果として不動産会社への営業電話が増える要因となります。
4-2 応札数はエンドユーザーへのアピール
査定依頼の案件を獲得しても、その案件に応札する不動産会社が少なければ査定依頼をしたエンドユーザーとしては期待外れとなり、サイトのサービスとしての価値・評判が低下します。
そのため、サイト側としては応札してくれる不動産会社を常に一定数以上確保する必要があり、この構造が新規の不動産会社に対しての「案件が増えている」という営業トークにつながり、営業活動の頻度を高めています。
そのため、サイト側としては応札してくれる不動産会社を常に一定数以上確保する必要があり、この構造が新規の不動産会社に対しての「案件が増えている」という営業トークにつながり、営業活動の頻度を高めています。
4-3 サイト同士のカニバリズムも
一括査定サイトも雨後の筍のようにポコポコと発生していますので、一括査定サイト同士の競争も激化しています。
「簡単に、手軽に査定できる」というキャッチコピーで集客しているため、もともと査定依頼をすることに対して心理的ハードルも低くなります。
結果として、同じユーザーが複数の一括査定サイトにエントリーする可能性も高くなり、他サイトよりも多くの不動産会社から応札してもらう必要性があります。
他サイトとの競争激化は広告宣伝費の増加につながり、サイトの評判を上げるためにも応札してくれる不動産会社の囲い込みも今まで以上に重要な戦略となります。
その結果、電話や訪問による営業が増え、「とにかく加盟してもらい、応札数を上げる」動きが強まっているのが現状です。
「簡単に、手軽に査定できる」というキャッチコピーで集客しているため、もともと査定依頼をすることに対して心理的ハードルも低くなります。
結果として、同じユーザーが複数の一括査定サイトにエントリーする可能性も高くなり、他サイトよりも多くの不動産会社から応札してもらう必要性があります。
他サイトとの競争激化は広告宣伝費の増加につながり、サイトの評判を上げるためにも応札してくれる不動産会社の囲い込みも今まで以上に重要な戦略となります。
その結果、電話や訪問による営業が増え、「とにかく加盟してもらい、応札数を上げる」動きが強まっているのが現状です。
5. 営業電話増加の本質
こうして見てみると、一括査定サイトからの営業電話の増加は単一の要因ではなく、複数の構造的変化が重なった結果です。
これらを踏まえて、不動産会社としてはどのように捉えるといいのでしょう。
これらを踏まえて、不動産会社としてはどのように捉えるといいのでしょう。
5-1 あくまでも営業トークと考える
一括査定サイトからの営業電話の増加は、必ずしも「不動産市場の活況」を意味するものではないでしょう。
むしろ、案件の取り合いや収益性の悪化といった、不動産業界や広告業界内部の競争激化が原因と考える方が理屈に合います。
「案件が増えてきて…」などと言ったセリフはあくまでも営業トークと捉えて、焦らずに考える必要があるのかなと思います。
むしろ、案件の取り合いや収益性の悪化といった、不動産業界や広告業界内部の競争激化が原因と考える方が理屈に合います。
「案件が増えてきて…」などと言ったセリフはあくまでも営業トークと捉えて、焦らずに考える必要があるのかなと思います。
5-2 楽して儲かることはないですよ
不動産会社としても、一括査定サイトは便利な道具ではあるのでしょうね。
ただ、他社との競争も激しく、一本釣りも難しいのは事実です。そして、どうしても「高値査定」はついて回ります。
「使うか使わないか」ではなく、「どう使うか」をしっかりと考えないと、結果的に費用倒れになってしまうのかなと思います。
ただ、他社との競争も激しく、一本釣りも難しいのは事実です。そして、どうしても「高値査定」はついて回ります。
「使うか使わないか」ではなく、「どう使うか」をしっかりと考えないと、結果的に費用倒れになってしまうのかなと思います。
5-3 売れなかったら意味がないですからね
6. エンドユーザーさんに向けて
一括査定サイトは、複数の不動産会社に一度で査定依頼ができる便利なサービスです。
しかし、その仕組み上「査定価格=売れる価格」とは限らない点には注意が必要です。むしろ、構造的に価格が高めに出やすい傾向があり、それが売却活動の長期化や価格調整(値下げ)の原因になるケースも少なくありません。
しかし、その仕組み上「査定価格=売れる価格」とは限らない点には注意が必要です。むしろ、構造的に価格が高めに出やすい傾向があり、それが売却活動の長期化や価格調整(値下げ)の原因になるケースも少なくありません。
6-1 高額査定≠高額売却ではない
一括査定では複数の不動産会社が媒介獲得に向けて競合します。
売主も「少しでも高く売りたい」心情があるため、「より高い査定額を提示した会社が選ばれやすい」という構造があります。
このため査定に応じた不動産会社は、実際に売却(成約)できる価格ではなく、「媒介契約を獲得するための価格」を提示しやすくなります。
結果として、査定額の平均値自体が実際の市場価格よりも高めにブレる傾向があり、売主が「そんなに高く売れるんだぁ」と相場を誤認するケースが多々発生します。
売主も「少しでも高く売りたい」心情があるため、「より高い査定額を提示した会社が選ばれやすい」という構造があります。
このため査定に応じた不動産会社は、実際に売却(成約)できる価格ではなく、「媒介契約を獲得するための価格」を提示しやすくなります。
結果として、査定額の平均値自体が実際の市場価格よりも高めにブレる傾向があり、売主が「そんなに高く売れるんだぁ」と相場を誤認するケースが多々発生します。
6-2 販売の長期化は色々問題が発生します
この査定価格と市場価格のズレは、売却活動に入ってから顕在化し、問題を発生させます。
「少しでも安く買いたい」買主が主体となる販売の現場において、相場より高い価格で販売を開始すると、当然ですが内見数や反響が伸びず、結果として価格改定(値下げ)を繰り返すことになります。
販売期間が長期化すると、売主にとっては心理的な負担だけでなく、「売れ残り物件」という印象がつくリスクもあり、結果として当初想定したよりも低い価格での成約になるケースも少なくありません。
「少しでも安く買いたい」買主が主体となる販売の現場において、相場より高い価格で販売を開始すると、当然ですが内見数や反響が伸びず、結果として価格改定(値下げ)を繰り返すことになります。
販売期間が長期化すると、売主にとっては心理的な負担だけでなく、「売れ残り物件」という印象がつくリスクもあり、結果として当初想定したよりも低い価格での成約になるケースも少なくありません。
6-3 正しく使えば便利です
もちろん、一括査定サイト自体が悪いわけではありません。複数の不動産会社の意見を比較できる点は大きなメリットです。
ただし、重要なのは、「提示された査定額をそのまま信じないこと」です。価格の根拠や販売戦略まで確認し、「なぜその価格で売れるのか」を説明できる会社を選ぶことが、結果的に早期かつ適正価格での売却につながります。

この記事を書いた人

エイチ・コーポレーション 代表:林 裕 地
【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。
結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。
保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など
ただし、重要なのは、「提示された査定額をそのまま信じないこと」です。価格の根拠や販売戦略まで確認し、「なぜその価格で売れるのか」を説明できる会社を選ぶことが、結果的に早期かつ適正価格での売却につながります。

この記事を書いた人

エイチ・コーポレーション 代表:林 裕 地
【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。
結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。
保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など