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住宅ローンの金利上昇が不動産売却に与える影響を考えてみる

「金利のある世界」になって住宅ローンの金利も上昇傾向に。金利の上昇は少しずつ不動産市場にも影響を及ぼしつつあります。不動産の売却を検討している方にとって、金利の変動が売却価格に与える影響は無視できない要素です。本記事では、住宅ローン金利の上昇が不動産の売却価格や購入意欲に与える影響などを考えていきます。

1. 金利と不動産市場の基本的な関係

いろいろなブログで書かれているので「耳にタコ」かもしれませんが、まずは住宅ローンの金利と不動産市場の基本的な関係について見ていきましょう。

1-1 政策金利が上がると住宅ローンも上がる

日銀が定期的(1ヶ月~1.5ヶ月周期ぐらい)に開く「金融政策決定会合」って会議があります。

頭のいい人(?)経済に詳しい人(?)達が日本の景気に関して色々と話し合いをする会議で、基本的に、景気が良くなったら「上げる」、景気が悪くなったら「下げる」の方向です。

ただ、今までの日本の景気が悪すぎて「金利のない世界」だったので、これ以上には「下がる」余地はなく、「いつ上げるのか」がポイントになっていました。

そして、2024年の夏だったかな?(うろ覚えで申し訳ないです)に20年ぶりぐらい?に上がりましたね。(下級国民の僕としては景気が良くなった実感は全くないんですが、上級国民の方々の感覚では良くなっているようです。)

政策金利が引き上げられると、政策金利をベースとして金利を設定している「変動金利」が上がります。基本的に1回の上げ下げの幅は「0.25%」です。(固定金利は10年国債の利回りをベースにしているので、政策金利が上がったからといって上がるものではないです)

結果として、大多数の地銀さんが採用していた変動金利が「0.525%⇒0.775%」に上がりました。

そして、今年になってもう一回上がって「0.775%⇒1.025%」になりました。

このタイミングぐらいでテレビや新聞でも「金利のある世界」って言葉が使われ始めたので、記憶にある方もいるのではないですか。

そして、ホントは3月・4月にも更に0.25%引き上げる予定だったのが、トランプ関税の影響を見極めたいとの理由から「据え置き」されました。

金利を上げたい植田総裁としては、次はいつ上げるんですかね?

7月ですかね?それとも9月かな?どちらにしても、次に引き上げられると「1.025%⇒1.275%」になるので、数字的にはまあまあパンチのある数字になりますね。

1-2 金利が上がると返済額が増える

当たり前のことですが、金利が上がれば返済額もそれに比例して増えていきます。(35年払いの場合です)
借入金額0.525%1.025%差額
4,000万円104,277円113,381円9,104円
3,000万円78,208円85,036円6,828円
2,000万円52,139円56,691円4,552円

返済表をご覧いただけば一目瞭然ですが、借入金額が高ければ高いほど金利が上がった場合の影響は大きくなります。

2. 金利上昇が売却価格に与える影響

次に、金利上昇が実際にどのように住宅の売却価格に影響するのかを具体的に見ていきます。

2-1 金利1%増で不動産価格は20%下落?

巷でささやかれている言葉に「金利が1%上がると、不動産の価格は20%安くなる」があります。

借入金額0.525%1.525%
4,000万円104,277円122,965円
3,200万円83,422円98,372円

たしかに、電卓を使って計算をすれば金利の1%は物件価格の20%ぐらいに相当します。

ですが、これはあくまでも机上の空論。例えれば、「東京オリンピックが終われば、東京の不動産価格は暴落する」と言い放っていた、自称「不動産コメンテーター」の無責任発言と同じだと思います。

仮に、金利が上がることで不動産価格が下落するのが本当であったとしても、今の時代は建築資材や建築労務費の強烈な値上げラッシュで、その下落幅を超えて値上げされるのが実情です。

金利が上がるということは、世の中の流れとしてはインフレになっているということで、不動産の価格は基本的には上昇傾向になるはずです。

2-2 ローンの審査は厳しくなるかも

住宅ローンの店頭金利が上がることで、ローンの審査は多少厳しくなる可能性はあります。

店頭金利が上がると、それに比例して審査をする際に使う「審査金利」も上がります。

審査金利が上がってしまうと、今までだったらギリギリセーフの範囲内だった人が返済比率オーバーで審査が否決されたり、諸費用を含んでの借入れができなかったりするケースも出てくるかもしれません。

そして、変動金利で借りている既存の顧客の中からも、返済が滞ってしまう人が出てくる可能性もあります。

そうなってくると、銀行としてはより一層審査に対してキビシイ姿勢で臨むことにつながります。

結果として、金利が上がって思うような借入ができず、購入価格を下げざるをえない人が増え、売るためには売却価格を下げる必要がでてくる可能性もあります。

2-3 売却期間の長期化

金利の上昇が直接的な原因ではないと思いますが、いま現在でも不動産の売却期間は長期化する傾向が強くなっています。

お米を筆頭とした食料品の相次ぐ値上げや、電気・ガスなどのインフラ料金も高くなっています。ごくごく一部の企業を除けば、とてもではないですが賃金アップが追い付いてこないです。

日々の暮らしに追われる人が増えるなか、物件への問い合わせ自体も減少傾向で、なおかつ実際に問い合わせが入るまでの期間も長くなっています。

そんな状況に追い打ちをかけるような金利の上昇です。より一層に販売期間も長くなるでしょうし、値段交渉が入る可能性も高くなるでしょう。

売却査定を依頼した際の「いまが売り時です」のセールストークや、予想以上の高価格査定(失敗せずに一括査定サイトを利用するための5つのポイント)、頻繁にポスティングされる「売却物件求む」のチラシ(相変わらず届く「マンション売りませんか?」チラシ…内容は99%ウソですよ)にダマされないようにしてくださいね。

3. 購入検討者の動向は

住宅ローンの金利上昇は、実際に物件の購入を検討する買主の心理にも影響を及ぼす可能性があります。

3-1 「金利が上がる前に」の買い急ぎ

口には出さずとも、実は「少しでも金利が低いうちに」と考えている買主はいるかもしれません。

銀行の担当者に聞いてみると、「住宅ローンの金利が上がりそう」のニュースが増えると、多少なりとも駆け込み需要はあるようです。

でも、大部分の人が変動金利で借りるので、駆け込みで買ったとしても、その後に金利が上がれば結局は上がってしまい、上がる前の金利で借りられるのも最大で5カ月しかないんですよね。

今までさんざんタダ同然の低金利で借りられる状況だったのに、どうして今更のタイミングで買おうと思うんですかね?不思議でしょうがないです。

3-2 「物件が増えるかも」の買い控え

買い急ぐ人がいれば、買い控える人もいるでしょう。

「金利が上がれば安くなる」を信じたり、「ローンが払えなくて売却する人が増えるかも」と考えたり。

人の考えは千差万別。各自の考えで物事を進めていただければいいとは思いますが、ムダに購入を先延ばしにすることで支払うことになる家賃や、転職や病気が原因でローンが組めなくなる可能性を考えると、買おうと思った時に買える物件を買っておくのが1番の正解だとは思うんですけどね。

4. この先の金利動向と市場予測

住宅ローンの金利は今後も変動が予想されます。これから不動産の売却をしようとする方にとって、金利の動向や市場の見通しを予測しておくことは大切です。

4-1 日銀の金融政策は

基本的には「上げていく」方向だと思います。

「こんなに景気が悪いのに」という意見もありますが、「アベノミクス」「黒田バズーカ」「異次元の金融緩和」などの御託を並べてお金をジャブジャブと垂れ流してきましたが、結局のところ景気は良くなってはいません。

むしろ、日本の財政状況が悪くなっただけではないでしょうか。

今のような低金利ではなく、ある程度は金利を上げておかないと、今以上に景気が悪くなった場合に対処もできないので、植田総裁としては「上げる」考えでしょうし、上げるために黒田のおっさんから植田さんに変わったのだと思っています。

トランプ関税の動向にもよりますが、早ければ7月ごろに上げるのかな?そして、できれば年内に2回は上げようと考えているような気がします。

そうなると、変動金利が1.25%~1.5%前後になってくるので、僕が不動産の仕事を始めた20年ぐらい前の金利にようやく戻ります。

金利が上がってインフレが落ち着き、お給料も上がって実質賃金がプラスになってくれば、今よりは世の中が良くなるような気がします。

とりあえず、「借りたお金には利子を付けて返す」世の中になってほしいものです。

4-2 不動産価格が下がるかも

金利が上がれば住宅ローンを借りずらくなる面もあるので、家を買おうと思う人が減るかもしれません。

「購入希望」が少なくなると同時に「売却希望」も少なくなれば、需給のバランスが整い価格は落ち着くのかもしれませんが、購入希望だけが少なくなるような状況になってしまうと不動産価格は下がるかもしれませんね。今までの「デフレ」経済と同じです。

4-3 上がる可能性もゼロではない

緩やかなインフレが続き、金利も上昇をするようであれば、世の中の商品価格も緩やかに上昇を続けます。

価格の上昇には建築資材や人件費も含まれます。

これらの価格が上がれば、とりあえずは新築の一戸建てやマンションの販売価格は間違いなく上がります。

新築が上がるのであれば、中古の値段もつられて上がるのが世の常です。ここ2~3年の車の値段を考えてもらうと分かりやすいと思います。

人気のある立地や状態のいい物件であれば、「新築が高すぎて買えない」購入者の需要を取り込んで、むしろ高く売れる可能性もゼロではないと思います。

5. 結局、金利の上昇はどう影響するのか

5-1 需要のある物件には影響しない

需要のある立地や物件であれば、金利が上がっても売却に影響することはほとんどないでしょう。

需要のある物件の売却で気を付けることは、金利の動向よりも売り出し価格をいくらにするかです。

「人気があるので」「いまが売り時です」「当社に任せてもらえれば」などなど、媒介を取るためのセールストークにダマされて相場よりも高い金額で売り出すことをしなければ、ある程度は順当に売却ができると思います。

5-2 需要の薄い物件は我慢が必要に

需要の薄い物件では、今まで以上に我慢が必要になると思います。

人口が減っていく日本では、今までのような「郊外型」の物件の需要は減っていくと予想されます。

実際に、郊外の一戸建てに住んでいた家族が、子どもの独立を契機に都心のマンションへ住み替えるなどの例も増えてきています。

「安いから郊外へ」「予算がないので安い物件を」と、値段で考えていた購入層にとっては、金利が上昇して返済額が上がるのは結構な痛手です。

返済額が上がるのであれば購入を見送る。もしくは、もっと便利な立地でと考えるのもムリはありません。

売却価格だけでなく、成約までの期間も今まで以上に長く想定しておく必要が増えると思います。

まとめ

金利の上昇局面での売却は、今後の金利動向と不動産市況を見ながら慎重に判断する必要があります。

ちょっとした不安でもお気軽にお問い合わせください。少しでも有効なアドバイスができるように頑張らせていただきます。



この記事を書いた人


 エイチ・コーポレーション 代表:林  裕 地


【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。

結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。

保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など

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