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金利上昇や物価高になるとマンションを売りたい人が増える理由を考えてみる

長期金利を中心に住宅ローンの金利がじわじわと上昇。物価高が家計を圧迫し生活費の支出が増え続け、住宅ローンの返済も上昇傾向。結果として、「マンションに住み続けるべきか、売却すべきか」と悩む人が増えているようです。今回は、金利や物価高がマンションの売却に与える影響と、売却を検討する時の注意点をわかりやすくまとめました。

1. 景気と金利と物価と賃金の関係の勘違い

この仕事をしていると、「こんなに景気が悪いのに買えない」とか「もっと給料が上がったらね」と言われる人と数多く会います。

気持ちは分かるのですが、ハッキリ言っておきますが、こんな事を言っている人が思っているような、自分にとって都合のいい状況には絶対にならないです。

1-1 景気が悪いと金利は下がる

まず大前提として、景気が悪い時には金利は下がります。恐らく、このことに関しては誰でも知っているかと思います。

では、どうして景気が悪いと金利が下がるのかを考えていきましょう。

 景気が悪いって、どんなこと? 
景気が悪いと言うことは、言い換えれば「物が売れない」ことです。


 では、どうして物が売れないの? 
買いたくても、買うためのお金がないからです。


 お金がないなら、借りたらいいんじゃない? 
でも、お金を借りたら利子を払わないといけないでしょ


じゃあ、利子を払わなくてもいいように金利をどんどん下げれば、お金を借りる人が増えて景気もよくなるんじゃない?


話しを単純にすると、こんな感じになります。

過去10年に渡って、安倍くんと黒田くんが「異次元」と銘打って続けてきた「低金利政策」は、お金をどんどん借りてもらって、世の中にお金をジャブジャブと流通させれば景気がよくなるんじゃないかとの幻想による政策です。

1-2 「景気が良くなる」とは「物価が上がる」こと

世の中のお金が増えた結果、ごくごく一部のお金持ちや大企業にはお金が行き渡りました。

ですが、低金利で「円」をジャブジャブと発行したことによって「円の価値」が下がって、今となっては「悪い円安」になってしいました。

石油をはじめとした様々な資源や食料品を輸入に頼っている日本では、円安が進んでしまうと輸入品の値段が上がってしまいます。庶民としては、日常生活品の値段が上がって「物価高」になってしまう困った状態です。

ですが、車メーカーを筆頭とした、商品を海外へ輸出する会社にとって円安は願ったりかなったりです。

過去の1ドル=100円の時代と、今の1ドル=150円とで比べれば、同じものを同じだけ海外で販売をすれば利益が50%増えるわけですから。笑いが止まらんでしょうね。

事実、春闘での賃上げ額もうなぎ登り。夏冬のボーナスもたんまりと支給されて、まさに「この世の春」でしょうね。

国の景況感調査なんて、こんなごく一部の大企業の業績が上がれば「景気が持ち直してきた」ぐらいの発表になっちゃうんです。いわゆる「好景気」ですね。

庶民にとってはツライ「物価高」も、国や一部の大企業にとっては「好景気」と判断されてしまいます。

1-3 賃金が上がるのは一番最後

こうやって、庶民が物価高にさんざん苦しめられ耐え忍んできたおかげで、ようやく「賃上げの波」が訪れようとしています。

最低賃金も全国的に1,000円を超え、「次は1,500円を」なんて言われています。

でも、勘違いしちゃダメですよ。賃金が上がったからって、庶民の暮らしがラクになる事はないです。

なぜなら、「商品の値段が上がる=物価が上がる=企業の売り上げが上がる」の結果が賃上げです。なので、企業の売り上げが上がった以上の賃上げは絶対にないです。だって、売り上げが上がった以上に賃上げをしちゃったら会社は倒産しちゃいますから。

一部の大企業を除けば、賃上げやボーナスは「物価高との調整」ぐらいのものです。仮に、実質賃金がプラスになったとしても「雀の涙」程度のものだと思います。

よく聞く「給料が上がったらね」と言って買うのをやめている人は、恐らく永久に買うことはできないと思います。

1-4 金利を上げて物価高を調整

不景気の日本と違ってアメリカは好景気(インフレ)が続いています。

給料もドンドン上がっているみたいですが、それ以上に食料品や家賃などの値上げが激しいみたいで、生活苦になっている人も大勢いるみたいですね。

そんなインフレをなんとか抑えようとFRBが金利を引き上げてきたのですが、その結果として、低金利の日本の円を売って、高金利のドルで資産運用をする人が増え、今の円安の原因の一つになっているようです。

日銀の植田総裁もなんとか頑張って利上げをしようとしているのですが、利上げをすれば国の借金である国債の利回りも上がってしまうため、自民党から色々といちゃもんを付けられているみたいですし、アメリカはアメリカでトランプさんがFRBに難癖を付けるしで、どうなることやらですね。

ただ、いつまでも今までのようなムチャクチャな金融政策を続けることもできないでしょうし、アメリカの金利が少し下落傾向になった今のタイミングで少しでも利上げをしたいのがホンネではと予測されています。

長期金利はじわじわと上昇していますので、どのタイミングで短期金利が上がるのか。

基本原則としては、長期金利が上がってから短期金利は上がると言われています。短期金利が上がれば、住宅ローンの変動金利も上がりますので、今後はどのタイミングで、どれぐらいまで上がるのかは気を付けていきたいですね。

2. 金利上昇が住宅ローンに与える影響

長期金利、短期金利ともに、金利の変動は住宅ローンの返済額に影響があります。

とくに、現在の住宅ローンの主流である変動金利で借りている人にとっては、「金利上昇=返済額の上昇」となり家計の圧迫につながります。

2-1 変動金利の返済額は増加する

住宅ローンの利用者の7割~8割ぐらいを占めている変動金利は、過去20年間の低金利時代には最強の住宅ローンでとても魅力的な商品でした。

住宅ローン控除を利用することで、ローンを使って家を買った方が実質的にプラスになるような状況でしたらからね。

ただ、その低金利が永久に続くと勘違いし、身の丈以上の買い物をした人にとっては、これからの時代はツライものになるかもしれないですね。

「5年ルール」や「125%ルール」があるため、今すぐに突拍子もないような返済額になることはないでしょうが、毎月の返済額が高くなり、総返済額も大幅に増えることになります。

このままの状況が続けば、2026年内には恐らく今よりも0.5%ぐらいは高くなると思います。

早めに返済額のシミュレーションをし、必要であれば、「早めに売却をしてローンを清算しようか」と考える人が増える可能性も否定はできないですね。

2-2 固定金利の人はひと安心

フラット35のような全期間固定金利で借りている場合は返済額が変わらないため、金利の動向にヤキモキする心配はありません。

ローンの契約当初には「なんで今の時代に固定金利で借りるの?」と、知り合いからはちょっとバカにされたりもしたでしょうが、こんな状況になってしまうと「先見の明」と言えるでしょうね。

事実、僕が5年前にマンションを買った時には、地銀さんの「全期間固定」で借りたのですが、当時で1.09%で借入できました。

僕の場合は自営業なので、サラリーマンの方ほどの金利優遇は取れないため、変動で借りても0.65%ぐらいだったと思います。

正直、借りてしまってからは「やっぱり変動だったかなぁ」と思ったこともありますが、今となってはほとんど変わらない1.025%まで変動金利が上がってきてますからね。まさに「固定金利の安心感」を実感しています。

このように、固定金利で借入をしている人は、せっかく今まで高い「保険料」を払ってきているので、金利の動向に一喜一憂することなく冷静に対処していただければ結構かと思います。

2-3 生活設計への影響

金利が上昇しローンの返済額が増えれば、旅行や車の購入、子どもの教育費などといった生活設計に関しての見直しが必要になってきます。

家計のゆとりが削られることで心理的なストレスが増加し、「このまま無理をしてマンションに住み続けるより、早めに売却して賃貸に移るほうが安心なのでは」と考える人が増えることもあります。

支払いが長期に渡る住宅ローンにとって、金利が上昇することは単なる数字だけの問題ではなく、家族全員のライフプランに影響を及ぼすことになります。

3. 物価高が家計が影響を与える仕組み

今更ながらですが、物価高が家計に影響を与える仕組みを見てみましょう。

3-1 生活費の増加

毎月、毎年の値上げに次ぐ値上げ。食料品や電気・ガスなどの光熱費、ガソリン代といった生活必需品の値段はホントにシャレにならないぐらいの上昇率ですね。

「生活が苦しくなったら毎月の固定費を見直してみましょう」なんて、訳知り顔でコメントしている胡散臭いコメンテイターもいますが、住宅ローンの返済は削りようがない固定費です。

金利の上がり方しだいでは、「ちょっとこのままでは暮らしていけないね」と感じる人も増えてくるでしょう。

3-2 貯蓄も減っちゃいます

物価高に追われる生活が続くと、貯蓄に回せるお金も減っていきます。

「毎月の赤字をボーナスで補填する」ことができればいいのですが、補填できる範囲を超えるような物価高になってきていませんか?

過去に自分も経験がありますが、「ちょっとまずいかな?」と思うような状態になる前にマンションの売却を考えるのも大切なリスクヘッジです。

3-3 予定していたライフプランへの影響

「5年ルール」や「125%ルール」があったとしても、変動金利である以上は金利が上がる状況が長くなれば、それだけ毎月の返済額も増えてしまいます。

子どもの将来を考えての塾や習い事などに必要な経費も上がるでしょうし、なにより自分自身の老後の資金計画にも影響が及びます。

完済を目指して今の支払いを続けるのも一考ですし、パンクを避けるためにも無理をせずに売却をし、賃貸への住み替えを検討してみるのも一つの方法です。

4. 金利の上昇や物価高で売却を考える人の主な理由

金利が上がってくると、「ローンの返済が苦しい」だけでなく、「売るなら今なのか?」と考える人も現れます。

金利が上昇するとなぜマンションの売却を考える人の増加につながるのかを考えてみます。

4-1 ローンの返済負担に耐えられない

金利が上昇することによるローンの返済額のアップに耐えられなくなるのが1番多い理由です。

特に「これぐらいの返済額ならなんとか」と、低金利が続くことを前提にマンションを購入したり、ボーナス払いを利用したりしている人には、金利の上昇はかなり厳しいものとなるでしょう。

ローンの返済を延滞したり、任意売却や競売などといった最悪のケースに陥る前に、早めの売却を選択する傾向が強くなります。

4-2 管理費や修繕積立金の値上げ

「この先、修繕積立金って値上げされないですか?」と、よく聞かれます。ですが、お答えできるのは「今のところ予定はありません」だけです。

管理組合や管理会社も、むやみやたらに値上げを考えることはありませんが、物価高による資材費の高騰や賃上げの傾向が持続するのであれば、将来的には値上げをせざるを得なくはなります。

新築や築浅のマンションのように値上げすることが前提の安い金額にはなっていませんが、「絶対に値上げはありません」とは断言できません。

築30年前後のマンションであれば、ある程度は将来的な必要経費を見越した金額に設定はされていると思いますが、2~3割程度の値上げは想定しておいた方がいいと思います。

4-3 買い手需要が減るのでは

金利が上がればローンを審査する時に適用される「審査金利」も高くなるため、一般的には住宅ローンの審査が厳しくなります。

借入れできる金額も下がるため、「買いたいけど予算が足りない」人が増えることになります。

世間では「金利が1%上昇すると、不動産の価格は20%下落する可能性がある」といわれています。

実際にはそこまで極端に値段が下がることはないでしょうが、「ない袖は振れぬ」で、借りられないのであれば買えないのは事実です。

そのため「この先、マンションが売れにくくなるのでは」と不安に思い、値下がりする前に売却しようと考える人が増えるかもです。

4-4 無責任な外野の「売り煽り」

前述のように自ら不安に思う人もいれば、無責任な友人・知人や、悪徳不動産会社から「高く売りたいなら金利が上がる前に」と、売り煽りを受ける人も出てきます。

不動産の価格が20%も下落するような状態は、言ってみればバブル崩壊と同じような状態です。

海外からの投資資金が大量に流入している、東京や京都、北海道などのごくごく一部の不動産を除けば、そこまで急激に不動産価格が下落するとは思えないです。

ですが、「不動産が高く売れる今のうちに売却をして、高金利で運用した方が儲かりますよ」などといった詐欺商法は増えるかもしれないですね。

「東京オリンピックが終われば、東京の不動産価格は暴落する」なんてことを言っていた経済アナリストなんて人もたくさんいました。

自分の言ったことに責任を持たない人の適当な言葉に踊らされると、最終的に損をするのは自分です。よくよく考えてから動いた方が賢明です。

5. 金利・物価高局面で売却するメリット

金利が上がる局面は、必ずしもデメリットだけではありません。むしろ早めに考えて行動することで得られるメリットも存在します。

5-1 プレッシャーからの解放

マンションを売却すれば住宅ローンを完済でき、将来の金利上昇リスクから解放されます。

特に変動金利で借り入れている場合は、「金利が上がったら毎月の返済額が増えちゃう」という心理的なプレッシャーからも解放され、精神的にも安心を得られるメリットが大きいです。

5-2 住み替えのチャンス

金利が上昇する前にマンションを売却することで早めに売却益を確定させ、今後のライフスタイルに合った住まいへ住み替えることも可能になります。

また、不動産という流動性の低い資産から、現金という流動性の高い資産に組み替えられることで、子どもの教育費や老後資金などにも利用できることも大きなメリットです。

6. 金利・物価高局面で売却するデメリット

一方で、金利上昇時の売却には注意点もあります。

6-1 想定より安くなる可能性

金利が上がることで不動産に対しての需要が少なからず減ってしまうのは事実です。

そのため、売却までの時間がかかってしまったり、価格交渉の場面では不利になるケースも考えられ、結果として損失を抱えることも少なくありません。

6-2 住み替えローンのリスク

売却後に新居を購入する場合は、同じく金利上昇の影響を受けます。

うまく売却できたとしても、新居での住宅ローンで負担が増える可能性があり、住み続けた場合との比較をしっかりと行う必要があります。

7. 後悔しないマンション売却のために

「金利が上がったら即売却」とは限りません。大切なのは、自身の返済計画や市場動向を見極め、最適なタイミングを選ぶことです。

7-1 金利動向をチェックする

日銀や金融機関の発表だけでなく、海外も含めた経済ニュースを定期的にチェックし、短期的な変動ではなく中長期的なトレンドを把握しましょう。

目先の情報に振り回されることなく、「これはどんな意味なんだろう?」と、深掘り検索してみるのが大切です。

7-2 資産とローン残高の整理

現在のローン残高に対して、マンションの現在価値を知ることが大切です。

この時に「いくらぐらいで売れるのかな?」と、安易に「一括査定サイト」を利用してしまうと色々と大変でめんどくさいことになってしまうので、スーモやアットホームなどのポータルサイトを除いてみるぐらいに留めておいた方が無難です。

【参照】【体験談】売却依頼をくれた顧客さんが、うっかり一括査定をやってしまった実話

ざっくりとでも売却予想価格を確認し、売却することでローンを完済できるか計算してみましょう。

手残りがあるのか、手出しが必要になるのかを明確にすることで、次のライフプランが立てやすくなります。

まとめ

金利の上昇や物価高は家計を直撃し、「マンションを売却すべきか」と悩む状況につながります。

毎月の返済の負担や、将来の不安を軽減するために売却を選ぶ人は確実に増える傾向にありますが、売却にはメリットとデメリットがあり、短期的な視線で焦って決めると後悔につながることも。

自分で考えても考えが纏まらない時には、お気軽にお問い合わせください。最適な判断を下すためのお手伝いをさせていただきます。



この記事を書いた人


 エイチ・コーポレーション 代表:林  裕 地


【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。

結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。

保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など

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