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【体験談】売却依頼をくれた顧客さんが、うっかり一括査定をやってしまった実話

今回は、実際に僕にマンションの売却依頼をしてくれた顧客さんが、興味本位で一括査定サイトを使ってしまったというリアルな体験談をお届けします。昔からの付き合いのある顧客さんなので、一括査定に対してのリアルな感想を聞くことができました。どんな結果になったのか、そしてそこから学べる注意点や対処法について詳しく解説します。

1. 顧客さんとの関係性

不動産屋さんが書いているブログにありがちな「ありそうな感じのフィクション」ではなく、リアルガチの顧客さんです。

お金の話しやマンションの所在地等々、書いてしまうと色々と不具合のある部分はぼかして書いていきますが、全体のストーリーとしては全てリアルの話しです。

1-1 始まりはマンションの購入から

知り合ったきっかけは、数年前にマンションを購入してもらったことです。

車をお持ちではなかったので、契約が終わってからの銀行手続きや役所での手続きの時の送り迎えもさせてもらいました。

まぁ、他のお客さんでも銀行や役所で手続きをする時に同行はしていたので、僕としてはルーティンの業務です。

決済・引渡しも無事に終わり、お別れする時に「何かあればいつでも連絡くださいね」の挨拶もいつもどおりです。

1-2 数年に一度ぐらいで連絡が

買っていただいたマンションのことも含めて、数年に一度ぐらいの割合で連絡をもらってました。

交友関係も広く、いろいろな業種の人と面識のある方ですが、不動産関係は僕しか知人がいなかったようで、仕事に関係ないことでも気になる事があると電話をくれるようなお付き合いでした。

「仕事でもないのにゴメンねぇ」と謝られるのですが、僕もふだんは暇にしていることが多いですし、話しをしていても面白い方なので全然気にせずにいました。

「不動産のことなら林さん」と言ってもらえたのも嬉しかったですしね。

1-3 仕事の関係で住み替えを

あるとき、「仕事変わったんだぁ」と連絡がありました。転職先は、今のマンションからちょっと距離のある場所です。

車をもっていないので、公共交通機関を利用しての通勤です。お仕事も専門職で忙しく、通勤時間が長くなったのが体力的にしんどいため、「住み替えたい」とのことでした。

不動産屋としてはありがたいお言葉ですが、「転職したばっかりでローンが通らないから、1年は頑張って我慢して」とお伝えして、時期が来るのを待つことに。

1-4 いよいよ住み替えです

転職して1年経ったところで、いよいよ住み替えに向けてのご相談です。

条件としては

・荷物が多いので、広さは今と同じぐらい
・今の職場に乗り換えなしで
・スーパーやドラッグストアが近くにあると嬉しい
・予算は○○○○万円ぐらい

こんな感じでした。

「今のマンションのローンも残ってるから、次のローンはどうなるの?」とのご質問もあり、いろいろ条件をご説明したうえでの結論は「フラット35を利用してのダブルローン」でした。

「【新居の購入 ⇒ 引越し ⇒ 現居の売却】が完了するまで、半年~1年ぐらいの期間はかかるからね」ともお伝えしましたが、「売り先行」での売却で、気にいった新居を見つけることができないよりは、ダブルローンを払ってでも気にいった新居を見つけたいとのご希望でした。

【参照】ダブルローンでマンション住み替え!成功のための賢い利用法ガイド

その後、新居も見つかり、現居の売却も終わって住み替え完了、一件落着です。

2. とつぜんの売却

無事に住み替えも終わってヤレヤレと思っていたら、「売らなきゃいけなくなった」との突然の連絡です。

2-1 売却の理由とは

仕事の都合かと思い聞いてみたところ、「父親の体調が思わしくない」とのことでした。

お父さんにも何度かはお会いしたことがあるのですが、お元気そうにしていたので意外でしたね。

「今すぐに」という訳ではないようですが、徐々に同居に向けての準備を始めたいとのことでした。

3. 売却査定をしてみたら

理由が理由ですのでやむを得ないです。売却に向けての準備を進めていくことになりました。

3-1 まずはローンの残債確認から

ここからの金額に関しては架空の金額です。ご了承ください。

購入して間もないマンションなので、当然ですが住宅ローンはモリモリ残っています。約2,000万円です。

はっきり言って、売却金額での完済はムリです。

ただ、その部分に関してはご本人さんも理解はしていて、ある程度の自己資金を入れなければいけないことを理解してくれているのが救いです。

3-2 僕の査定金額は

「1,800万」と言いたいところですが、1,700万の査定です。

査定の根拠をご本人さんにご説明すると、「まぁ、それぐらいになっちゃうのかなぁ」との感想でした。

「もうちょっと手出しを少なくできればいいけど。ちょっと考えてみるね」とのことです。

査定の時にいつもお客さんには、「あくまでも査定は「これぐらいでどうですか?」の値段です。実際に値段を決めるのは持ち主さんなので、自分が納得できる値段を指示してください」とお伝えしています。

初見のお客さんでも、既存の顧客さんでも、僕のスタンスは変わらないので、今回の査定に関しても「いいですよぉ、ゆっくり考えてまた連絡ください」でお別れしました。

3-3 知り合いの不動産屋さんにも…

2~3日したら、「知り合いの不動産屋さんにもお願いしようかと」と、若干申し訳なさそうな声で連絡がありました。

ぜんぜんOK!もともと僕がオススメする媒介契約は「一般媒介」ですから。気にする事なんて何にもないですよ。

【参照】不動産屋がホンネで語る、一般媒介が不動産売却に最適な理由

「ポータルに写真を載せたいから、お部屋が片付いたら連絡くださいね」で、その日のやりとりは終了です。

4. どうやら一括査定を使ったらしい

お部屋の準備ができたとの連絡があり、マンションへ伺ってみたら面白い話しが聞けました。

4-1 知り合いの不動産屋ではなかった

以前のマンションを売却する時にも、お父さんが以前にお世話になった不動産屋さんとの一般媒介だったので、今回の「知り合いの不動産屋さん」もてっきりその不動産屋さんかと思ってました。

写真を撮りにマンションへ伺ったら、写真を撮る前に「ちょっと林さん、これ見てよっ!」って、他社さんの査定書類を見せられました。

社名を見てみたら

 A社 関西系のフランチャイズ加盟店。ブランド名はかなり有名ですが、思ったように売り上げを上げることができず、2~3年ぐらいで経営が傾き脱退する会社が続出しているらしい。ですが、A社は比較的順調とのウワサは聞いています。

 B社 地場の準大手のポジション。以前よりは元気がないような感じはしますが、まだまだ頑張ってやっていらっしゃいます。


「あれっ?〇〇社さんじゃなかったの?」と聞いてみたところ、友人知人の類から勧められたのか、一括査定サイトを使ってみたとのことでした。

まぁ、僕としてはどこの会社さんでも関係ないので、どうでもいいことですけどね。

長い付き合いの顧客さんなので、これ幸いにと色々と他社さんのことを聞いてみました。

4-2 A社さんの場合

わりとイケイケの感じだったようで、定番の「弊社に任せていただければ…」のセリフも出たようです。

査定書類も種類豊富に持ってきて説明をしていったようですが、お客さん曰く「なんか一方的にベラベラ喋ってるだけで、何を言ってるのかさっぱり分からんかった」らしいです。(笑)

査定価格に関しては、「1,700万だなんてとんでもない。弊社に任せてもらえれば1,900万でもいけますよっ!」と、大風呂敷を広げたようです。

4-3 B社さんの場合

やる気があるのか無いのか、よく分からない対応だったみたいです。

査定書類もたくさん持ってきたのですが、ほとんど説明がなく「置いて帰った」状態だったようです。

お客さんから「ねぇ林さん、この書類の意味って分かる?」って聞かれて、2人で書類を眺めながら、ああでもないこうでもないと話しをしていたぐらいです。

査定価格に関しては1,800万でした。

4-4 総評

結果として、売却価格は1,800万スタートになりました。

僕が1,700万の査定価格を提示した時に、根拠に関してもお客さんと色々とお話しをしていたこともあり、A社の1,900万に関しては、「どう考えてもそんな値段で売れる訳がないっ!」。

B社の1,800万に関しては、「できれば手出しを少なくしたいから、とりあえず1~2ヶ月ぐらいは様子をみて、売れたらラッキーだよね」の感想です。


今回のお客さんの例をもとにして考えてみると、不動産会社が査定に使うデータはほとんど同じものを使っているので、似たり寄ったりの査定価格が出てくるであろう。

そして、どんなステキな査定書類を作成して持参したとしても、お客さんには響かないのかなということです。

そんなことより、何より問題なのは、ネットでガンガン大量に広告を打って、「無料査定すれば不動産が高く売れる!」と、事情を知らない一般の売主さんを煽りまくっている一括査定サイトです。

5. 一括査定後に起きた問題とは

いろいろなブログでも書かれていますが、実際に一括査定サイトを利用した後に起きた問題を書いていきます。

5-1 応札業者からの営業電話

どこの一括査定サイトを利用したのかまでは聞いていないのですが、恐らく今回のお客さんの査定依頼に対しては5社が応札しています。

ですが、実際に査定をしたのがA社・B社の2社だけです。

では、どうして5社が応札したと言えるのでしょう。その理由が、しつこいぐらいの営業電話です。

そもそも、お客さんはA社・B社の2社の話しを聞いただけで疲れてしまい、「これ以上の不動産屋さんと話しをさせられるのは勘弁だわ」と困っていました。

実際に、関西系の大手不動産会社、名前も覚えていないような不動産会社、そして関東系の大手不動産会社の3社から電話が入ったようです。(大手不動産会社も社名はうろ覚え。聞いている限りで「あそことあそこ」かなと、僕があたりを付けただけです)

何度も断ってはいるのですが、「ぜひ弊社にも査定を…」と言って何度も電話を掛けてくるようです。

お客さんが「なんで断ってるのに、しつこく電話を掛けてくるんだろ」と不思議がっていましたが、「応札して〇〇さんの個人情報を買ったんだから、査定しないと経費がムダになっちゃうでしょ」と教えてあげました。

前述したように、一括査定サイトはネットにガンガン広告を出稿しています。当然ですが、そこには広告費が発生しています。

ですが、査定依頼をした〇〇さんは一切の費用を支払わず、無料で一括査定サイトを利用しています。

だれが広告費を負担しているかと言うと、応札した不動産会社です。

聞くところによると、1件の入札につき10,000円~15,000円ぐらいの費用を支払わなければならないようです。

それだけの経費を掛けて個人情報を入手したのであれば、なんとしても査定ができるようにしつこく営業電話を掛けてくるのは当然ではないですか?

そのあたりは、引っ越し費用の見積もりサイトと同じ仕組みです。

「タダより高い物はない」は、覚えておいた方がいいと思いますよ。

【参照】失敗せずに一括査定サイトを利用するための5つのポイント

5-2 電話がダメならDMで

絶妙のタイミングで関東系の大手不動産会社からDMが届いたようです。

しかも、届いた封筒がA4サイズの立派な封筒で、よくある「このマンションを探しています」のチラシよりも、よりいっそうに具体的な買い客さんの条件を書いたチラシが同封されていたようです。

あまりにも具体的な書き方をされていたので、お客さんが不安に思って「なんでこんなチラシが郵送されてくるの?」と電話をかけてきたぐらいです。

「だって、電話で査定を断ったでしょ?だから、電話がダメならDMでってことじゃないですかね」「たぶん、しばらくは「売り物件求む」のポスティングも増えるだろうから気を付けてくださいね」とお伝えしておきました。

6. 査定の注意点

一括査定サイトはキライですが、全面的に否定をするわけでもありません。

使い方に気を付けていただければ、まあまあ有効な手段だとは思います。

6-1 「弊社に任せてもらえれば」はマユツバ

よほどのハズレを引かない限り、どこの不動産会社に頼んでも成約価格への影響は微々たるものです。

「囲い込み」とか「塩漬け」とか、前時代的な言葉もありますが、今の時代にそんなことをするような不動産会社は皆無です。

そんなことよりも、「弊社に任せてもらえれば」のセリフで、専属専任や専任で媒介契約を結びたがる不動産会社の方が危険度は高いと思います。

ですが、問い合わせの窓口が一本化されるので、めんどくさがり屋さんにとっては専属専任や専任の方が簡単です。ご自身の性格とも相談して決めてみてもいいかもしれませんね。

6-2 相性のいい担当者を見つけるため

お互い人間ですから、やっぱり相性はあります。

「査定価格や根拠などを聞くため」と言うよりも、「どんな担当者なんだろう」と、担当者の人柄を見るために使ってみるのもいいかもしれません。

まとめ

軽い気持ちで一括査定サイトを利用してしまった顧客さんを例に、一括査定サイトの実情をお話ししてきました。

車の残クレと一緒で、仕組みをしっかりと理解したうえでご利用いただくと有効な手段にはなると思いますが、「弊社に任せてもらえればこの金額で」と、安易に高額査定に飛びつくと痛い目をみる可能性が高くなります。

ご自宅の売却をお考えの際には、ぜひとも一度お問い合わせください。



この記事を書いた人


 エイチ・コーポレーション 代表:林  裕 地


【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。

結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。

保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など

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