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築古マンションの自主管理は売れにくいは本当か?購入者の不安を徹底解説

築古マンションの中には「自主管理物件」が少なくありません。管理費が抑えられるメリットの一方で、売却の際に「売りづらい」と言われることも多くあります。今回は、購入者が抱える「管理体制への不安」や「将来的なリスク」など、自主管理マンションが売れにくい理由や背景を解説するとともに、購入者が感じる不安を取り除く方法や売却を成功させるポイントをお伝えします。

1. まずはマンションの管理方式の違いから

一般的に、マンションの管理方式には

・全部委託方式
・自主管理方式
・一部委託方式

大きく分けて上記の3種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1 全部委託方式

現在のマンションにおいて最も一般的な管理方式なのが「全部委託方式」です。マンションの会計や建物の保守・管理などのすべての業務を管理会社へ委託する方式です。

すべての業務を管理会社へ委託するため所有者としては1番手間がかからず簡単ですが、その分管理費は高くなってしまいます。

注意点としては、管理業務のすべてを管理会社に委託したとしても 「マンションを管理する主体はあくまでも管理組合である」ことです。

1-2 自主管理方式

管理会社に業務を委託せずに、マンションの所有者である管理組合自身で管理する方式です。

主な業務例としては

・管理費や修繕積立金等の徴収
・外廊下や階段、ゴミ捨て場など共用部の清掃
・決算に関しての会計業務
・エレベーターなど設備点検の手配
・大規模修繕工事の予算編成や工事業者の選定

などが挙げられますが、実際にはもっと多岐に渡る業務が発生し、なかなか簡単なものではありませんが、「全部委託方式」のように管理会社へ業務を委託しないため管理費用が安価になることがメリットになります。

手間を取るかお金を取るかの二者択一です。

1-3 一部委託方式

「全部委託方式」と「自主管理方式」の中間にあたり、管理会社へ委託する業務内容を限定する方法です。

たとえば「日常の清掃業務は管理組合で。設備点検や会計業務は管理会社へ委託する」というように、委託する業務を制限することで、少しでも管理に係るコストを下げようという考えです。

2. 築古マンションで自主管理が増える理由とは

管理会社に業務を委託せず、マンションの住民自身(管理組合)で管理を行う自主管理の形態が築古マンションで増える理由には、管理体制やコスト面の歴史が影響しています。

2-1 自分達でもできるんじゃない?

どんなマンションでも、新築の時からいきなり自主管理で管理を行うことはありません。おおむね2回目の大規模修繕工事が終わった築30年~40年ぐらいの辺りから増えてきます。

几帳面な性格で、毎年、毎回のマンションの理事会に出席して、管理会社の業務報告を聞いて業務内容や手順も分かってくると、「これぐらいのことなら自分達でもできるんじゃない?」と言い出す人が出てくるのでしょうね。

新築で買って30年~40年経てば定年を迎えて時間を持て余す人も出てきます。マンション内でのコミュニティも出来てくるでしょうし、定年後の暇つぶしと言っては失礼ですが、「時間もあることだしやってみよう」となってもおかしくはありません。

業務委託から自主管理へ移行するきっかけとしては、大部分がこんな理由だと思います。

2-2 月々のランニングコストが下がるのでは

「1-2」でも書きましたが、手間を取るかお金を取るかです。

誰かに仕事を頼めばお金が発生する。自分でやればタダでできる。定年になって収入は減ったが、自由にできる時間は増えた。だったら自分たちでやって毎月の必要経費を少しでも安くしよう。

こんな感じで自主管理のマンションが誕生するんだと思います。

3. 「自主管理のマンションは売れない」の4つのウソ

「マンション 自主管理 売れない」ぐらいのワードで検索すると、たくさんのブログが出てきます。

そんなブログで書かれている売れない理由の「?」なものを書いていきます。

3-1 管理組合がない

長年不動産の仕事をしてきていますが、自主管理であろうと全部委託であろうと、管理組合のないマンションに出会ったことはないです。

これは恐らく「管理組合が機能していない」の間違いだと思います。

管理組合が機能していなければ、自主管理だけでなく全部委託のマンションでも売りづらくはなってきます。その理由は「建物の管理が雑になっているから」です。

賃貸に住んでいる人からすれば、マンションを自分で管理するという概念はないでしょう。大家さんから借りているだけですからね。

なので、マンションに関しての諸々の取り決めを「管理会社が決めている」と勘違いされている人が多数います。管理費や修繕積立金の値上げもそうです。勝手に管理会社が値上げすると思っているみたいです。

管理会社はあくまでも管理組合から業務を「委託」されているだけです。なので、管理組合(所有者)が建物の管理に無関心で管理業務の内容について何も言ってこなければ、管理会社は何もしません。放っておいてもやってくれるのは日常清掃ぐらいのものです。

「あそこが汚れている」「あそこが壊れている」状態でも、管理組合からの連絡がなければ放置しておきます。

気づいても連絡しない。他の住人との話しにも上がらない。マンション内でのコミュニティが形成されていない、無関心な住人が集まっている「機能不全の管理組合」であれば、マンションは売りづらくなってしまいます。

3-2 管理規約がない

これも遭遇したことがないです。

新築の時には必ずありますから、どんなに築年数が経っても管理規約はあります。ただ、更新・変更していない管理組合はたくさんあります。暗黙の了解で物事が進んでいるパターンです。

典型的なのがペットに関してです。

管理規約ではペット不可なのに、あそこの部屋も、ここの部屋もペットを飼っているってマンションは結構見受けられます。

管理規約の変更は理事会で過半数の賛成がないとできないため、めんどくさくて変更していないんでしょうね。「別に特に問題もないし、今のままでいいんじゃない」ってことでしょう。

ただ、今までは問題がなくても、人の入れ替わりと共に問題が発生するリスクはあるので、時代の変化とともに管理規約もしっかりと変更をしておいたほうが安心ではあります。

3-3 長期修繕計画がない

これは当たってます。

長期修繕計画を作成・更新するのもお金が必要なので、自主管理だとなかなか難しいのは事実でしょうね。

ただ、管理会社が入っていても長期修繕計画がないマンションもあるので、一概に自主管理のマンションだからという理由ではないです。

「3-1」で述べたように、管理組合が機能していると誰かが「作った方がいいのでは?」と言う確率も高くなるので、合わせ技一本って感じで考えていただければと思います。

3-4 住宅ローンが組めないことがある

銀行は審査の内容を教えてはくれないので、ウソとは言えないのですが、九分九厘ウソです。

今まで銀行の担当者からマンションの管理形態を聞かれたことはありません。

ただ、フラット35を利用するに際には長期修繕計画が作成されていることが必須なので、結果として住宅ローンが組めないことはあります。

4. 購入希望者が抱く自主管理への不安

自主管理マンションを売却する時に「売りづらい」と言われる背景には、購入者が抱くいくつかの不安要素があります。

4-1 はたして自分にできるだろうか

今まで賃貸に住んでいて、建物の管理に関しては全く意識してこなかった購入者さんです。

自分のお部屋を維持するだけでも大変なのに、「マンションの共有部の管理なんてムリっ!」「役員なんてできないっ!」と思うのも当然です。

ですが、他のお部屋に住んでいる方々も同じような状態から今に至っているわけですから、特殊なことをしているわけではありません。

自分一人で抱え込む必要もなく、自分一人で結論が出せるわけでもありません。

何か問題があれば理事会を開いて住民同士で相談するわけですし、他の住民の方々も今までに役員をやってきて大変だったことも分かっているはずです。

自主管理のマンションに住んでいたからこその体験談を伝えることで、購入者さんの不安を和らげることもできると思います。

4-2 他の住民とのコミュニケーション

自主管理のマンション特有の問題ではなく、築年数の経ったマンションを購入する際に不安になるのが、他の住民の方々とのコミュニケーションです。

長く隣近所で暮らしてきた人たちの中に、自分たちが新たに引っ越してきて上手くコミュニケーションが取れるだろうか。

「やっぱり高齢の方が多いですか?」「子どもって何人ぐらい住んでますか?」などの質問は多々受けます。

新しい人に対して心配をするのは他の住民の方も一緒ですから、長く住んできたからこそ分かるコツを教えてあげてください。

5. 自主管理でも売れるマンションの共通点

「自主管理=売れない」と決めつけるのは早計です。実際に売却する際にはスムーズに売れるマンションもあります。

自主管理物件でも売れやすいマンションの共通点を見ていきましょう。

5-1 管理組合の運営体制がしっかりしている

自分たちでマンションの保守・管理・運営を行っている自主管理のマンションですから、全部委託や一部委託のマンション以上に管理組合の運営体制は大切になってきます。

廊下や階段、エントランスやゴミ置き場などの清掃状態は目につきやすい場所です。「ゴミ」が落ちていると住んでいる人のモラルも疑われかねないので気を付けたいですね。

5-2 建物の修繕状況や修繕計画

定期的な大規模修繕工事が行われ、外壁や共用部のメンテナンスがしっかりとしていると、購入者としても安心感が増してきます。

長期修繕計画が作成されていれば分かりやすいのですが、そうでないのであれば、どのような経緯で住民の合意を得ているのか。今後の修繕予定はどうなっているのかなど、将来的にも安心して住み続けることができることを教えてあげてください。

5-3 立地の良さ

自主管理のマンションに限らず、築年数の経ったマンションは案外と立地のいい場合があります。

人間だれしも便利な場所に住みたいと思うはずです。であれば、まずは便利な場所に戸建てなりマンションなりを建てるのではないですか?

駅の近くや商業施設が徒歩圏内にあるようなマンションであれば、自主管理であってもやはり売れやすくはなります。

まとめ

売却が難しいとされる築古の自主管理のマンションでも、決して売れないわけでもありません。

むしろ、管理会社に管理業務を委託しているマンションよりも、主体性を持った、良好な管理運営をしている自主管理のマンションも多く見受けられます。

本来であれば、マンションの管理は「管理会社に全部任せてやってもらう」ものではなく「住民が管理組合を形成し、主体性をもって管理運営していく」のが理想形です。

自主管理だからこその住民同士のつながりや、自分たちの資産であるマンションを自分たちでしっかりと維持管理していく自主性など、自主管理ならではのマンションの魅力をアピールして売却を成功させましょう。



この記事を書いた人


 エイチ・コーポレーション 代表:林  裕 地


【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。

結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。

保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など

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