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離婚時の共有財産の分配と財産分与の注意点

離婚に際して共有財産の分配は重要なステップです。財産分与をスムーズに進めるためには、共有財産の把握と適切な分配方法を理解することが大切です。今回は、財産分与で気をつけるべきポイントを詳しく解説し、後悔しないための手続き方法をお伝えします。

1. 共有財産とは

共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産のことをいい、たとえ財産の名義が夫婦のどちらか一方の場合でも、もう一方の貢献があったとみなされて共有財産に該当すると考えられています。

離婚時の財産分与の対象はあくまでも共有財産に限られるため、まずは共有財産に対しての考え方を見ていきましょう。

1-1 共有財産の定義と範囲

共有財産は、夫婦が婚姻中に共同で築き上げた資産のことを指し、結婚前からどちらか一方が所有していた財産(特有財産)を除いたものが共有財産とみなされます。

「これは自分の独身時代からの財産だ!」と言うことは勝手ですが、そうやって主張するためには明確な根拠や証拠が必要になります。

【参照】離婚における特有財産の証明方法とポイント

一般的には、つぎのようなものが共有財産の対象となってきます。

 現金や預貯金 結婚した日付以降の現金や預貯金は、夫婦のどちらかの名義であっても財産分与の対象になります。

専業主婦の奥さんのパート代を「へそくり」として貯めておいた預貯金であっても、財産分与の対象となります。

財産分与の対象になるかどうかは、名義ではなく実質的な中身で判断することに気を付けてください。

 生命保険 積立型の生命保険は解約返戻金の部分が財産分与の対象になります。

ただし、独身時代から加入している生命保険の場合には、結婚後に支払った保険料に対応する部分の解約返戻金のみが財産分与の対象になることに注意してください。

 自動車 婚姻中に購入した車は共有財産です。ある程度の値段で売れるようでしたら、売却して現金を分ける。離婚しても乗り続けるようでしたら、売却想定額の半分を相手に渡すなどの方法で対処することになります。

二束三文の価値しかないようでしたら、スルーしてもいいかと思います。

 退職金 退職金も財産分与の対象になります。ただし、ケースバイケースです。公務員や上場企業などに勤めていて、あと5年~10年で定年退職を迎えるなどの場合で、「これぐらいは退職金が出るだろう」と予想できる場合に限られるようです。

 年金 配偶者が婚姻期間中に厚生年金に加入していた期間に関しては年金の分割が可能となる制度があり、合意による分割や法定分割などいくつかの方法があります。

【参照】離婚時の年金分割(日本年金機構)

 不動産 不動産の名義が夫婦のどちらか一方になっている場合でも、婚姻中に購入したものであれば共有財産として財産分与の対象となります。

1-2 個人財産との違い

婚姻期間中に取得した財産であっても、夫婦のどちらかの個人的な財産とみなされた場合には「特定財産」となり、共有財産の対象になりません。

例えば

・結婚前にそれぞれが貯めていた預貯金
・結婚前にそれぞれが借入をした借金
・結婚後に個人的に借入をした借金
・それぞれの家族から相続した財産  など


2. 財産分与の基本ルール

共有財産の基礎知識が分かったら、次は財産分与の基本的なことを見ていきましょう。

2-1 法的な分与基準

原則的には夫婦の収入に関わらず1/2となっています。これは、会社員の夫と専業主婦の妻であったり、子供の有無に関わらず同じです。

法律的には、「夫が会社で安心して仕事ができたのも、妻が家庭を支えたから」との考えのようです。

2-2 協議による分与方法

財産分与にもいくつかの考え方、方法があります。

 清算的財産分与 文字にすると仰々しいですが、「夫婦で築き上げた財産をキレイに清算しましょう」という、もっとも代表的な財産分与で、一般的に「財産分与」と言う場合には、この清算的財産分与のことを指すことになります。

たとえば、離婚時に夫婦の共有財産として500万円の預貯金があった場合に、250万円ずつに財産分与することなどがあたります。

 扶養的財産分与 離婚後に配偶者の生活が苦しくなることが予想される場合に、相手の扶養のために行う財産分与のことです。

たとえば、専業主婦だった妻が離婚後すぐに働ける見込みがない場合に、「離婚後のしばらくの間は扶養的財産分与として毎月5万円を支払うこと」などがあります。

この扶養的財産分与は、子どものために支払う「養育費」とは別のもので、法的な規定もありません。そのため、どんな場合でも発生する財産分与方法ではありませんが、裁判になると認められるケースも割とあるようです。できることなら、裁判ではなく話し合いで解決をする努力をしてください。

 慰謝料的財産分与 浮気やDV、モラハラなど、離婚の原因を作った側に請求する、いわゆる慰謝料ですね。

気を付けてほしいのが、慰謝料的財産分与の中には慰謝料が含まれていることです。「慰謝料的財産分与=財産分与+慰謝料」です。「慰謝料的財産分与+慰謝料」はできませんので、間違えないでください。


3. 共有財産の評価方法

財産分与をする際の、共有財産の評価の仕方を見ていきましょう。

3-1 不動産の評価

離婚時の財産分与で問題になるのが不動産です。基本的には、離婚時や別居時の時価を評価額として、それを1/2ずつとします。

判断が難しいのが、「時価」の考え方です。「査定価格」も時価ですし、「販売価格」も時価です。ですが、ホントの時価は「成約価格」です。売れなければ不動産の価値は未知数ですからね。

夫婦で築き上げてきた1番大きな財産になる不動産です。売却に関しては焦らず、しっかりと考えて行うようにしてください。

【参照】離婚時に家を売る最適なタイミングは「前・後」?成功するためのポイント

離婚時の財産分与の割合に関しては、不動産の名義や持分割合は無関係です。全部が夫名義であったり、夫:妻の持分割合が8:2などとなっているような場合でも、財産分与の割合は原則として1/2となります。

3-2 金融資産の評価

 現金・預貯金 単純明快です。残高を1/2に分けてください。

 株 離婚すると決めた日に売れた額を1/2するのが簡単なのですが、相場の流れもあるので一概には言えないですね。ただ、相場は不確定な部分が多くあるので、シンプルに当日の成り行き売りで処分してしまうのがいいかもしれないです。

 車・貴金属・時計 使っている、身に着けている方には思い入れもあるでしょうが、思い入れに値段を付けることはできません。さっさと売却して1/2にするのがいいと思います。

 生命保険 解約返戻金を基準にするのがいいと思います。満期返戻金と比べると割り引かれた額になってしまいますが、その差額と満期までに支払う保険金との差額を計算していくと埒が明かないので、解約返戻金を基準に計算しましょう。

実際に保険を解約して返戻金をもらうのであれば、それを1/2に。解約しないのであれば、保険に加入し続ける方が相手に1/2の現金を払うようにしましょう。

例えば、夫が加入している保険の解約返戻金が500万円で、離婚後も保険に加入し続けるのであれば、夫は妻に対して250万円の現金を支払うことで財産分与を終わらせることができます。


4. 財産分与での注意点

4-1 へそくりの対策

離婚する夫婦の状況によっては、お互いが疑心暗鬼になり「へそくり」をしている場合もあるでしょう。

相手の生活パターンを観察することである程度は発見できると思いますが、隠しやすい場所や手口を紹介しておきます。

 現金で隠している 昔ながらのへそくりの方法です。
自宅で自分しか触らないような場所や引き出しの奥、実家の自分の部屋に隠すなどもあります。

 内緒の銀行の口座 ネットで手続きが完了し、通帳も発行されないネット銀行に隠している場合もあります。

過去に何人かのご主人がやっていたのが、給与振り込み口座が2つ作れる会社に勤めていて、奥さんに第2口座のことを内緒にしていた人がいました。お気を付けください。

 電子マネーでチャージ 最近だと電子マネーとしてチャージしている可能性もあります。ぱっと見では残高がわかりにくいため、なかなか気づきにくいです。機会があったら1度探してみてもいいかもしれないです。

4-2 負債の分担

「1-2 個人財産との違い」で書いたように、独身時代や結婚後に1方が個人的に借りた借金は共有財産ではないため財産分与の対象にはなりません。

ですが、自宅を買った際の住宅ローンの残債は共有財産になります。そのため、離婚の際には自宅を売却して住宅ローンを清算するか、1方が住み続けるのであれば、その後のローンの取り扱いをしっかりと決めておく必要があります。

基本的には、離婚時には自宅を売却して住宅ローンを清算することをオススメしていますが、ご夫婦それぞれで事情があるでしょうから、しっかりと話し合いをして、将来に不安を持ち越さないようにしてください。

【参照】離婚をする際に共有名義の不動産がおよぼす影響とは

まとめ

離婚の際の財産分与に関しては、共有財産と特有財産の認識の違いや財産の評価方法など、トラブルが発生するケースは多々あります。

今回の記事を参考にしていただき、共有財産と財産分与に関しての話し合いをしっかりと行っていただき、少しでも円満に離婚が成立するように頑張ってください。

ちょっとした愚痴や相談などはいつでもお気軽にお問い合わせください。実体験をもとにしてできる限りのお手伝いをさせていただきます。



この記事を書いた人


 エイチ・コーポレーション 代表:林  裕 地


【経 歴】
住宅リフォームの営業を経て不動産売買仲介会社に転職。エイチ・コーポレーションを平成26年に開業。

結婚のタイミングで新築マンションを購入。その後の子育てや離婚、マンションの売却を経ての中古マンション購入など、実体験に基づいての様々なご提案ができます。

保有資格:宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/福祉住環境コーディネーター など

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